「育ててもすぐ退職」一括採用の破綻が招く事態 卒業後すぐ就職できず若年層の失業率は上昇も

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新卒入社式という光景は見られなくなるかもしれない(写真:Fast&Slow/PIXTA)

この時期は、人事異動による転勤と新入社員の受け入れで、会社関係の引っ越しが多い「転勤シーズン」です。この3年間、コロナ禍で転勤が抑制されたため、今年は過年度分を含めて大規模な異動を行う企業が多く、引っ越し業者の手配が困難になっています。

ビジネスパーソンにとっては、長かったコロナ禍も終わり、「ようやく春の風物詩が戻ってきた」と感慨深いところかもしれません。ただ、「転勤シーズン」というのは日本独特の慣行で、将来はこの光景が見られなくなる可能性があります。

今回は、将来「転勤シーズン」がなくなることによって起こる日本の雇用システムの劇的な変化について考えてみましょう。

アメリカでは転勤はほとんどない

将来について考える前に、なぜ日本では一年のうち今の時期が「転勤シーズン」になっているのでしょうか。これには、日本の雇用システムが大いに関係しています。

多くの日本企業は、社員を数年おきに異動させます。異動には、①人員過剰の部門から人員不足の部門へ異動することで、社員を解雇せずに人員構成を最適化できる、②社員にいろいろな業務を経験させてジェネラリストとして育成できる、というメリットがあるためです。

また日本では、新卒一括採用の慣行があり、4月1日に新入社員が入ってきてます。人員構成が大きく変わるので、既存の社員の異動もこれに併せて一体で行うのが効率的です。これが、今の時期が「転勤シーズン」になっている理由です。

このように、「転勤シーズン」は異動や新卒一括採用という雇用慣行と深く結びついているわけです。ただ、私たちにとって当たり前のこうした雇用慣行は、アメリカなど諸外国ではあまり見られない、日本固有のものです。

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