堀井美香氏、退職の相談には「いたほうがいいよ」 50歳と45歳で会社を辞めた2人が語る"独立後"
堀井:今の祥子さんのお話もそうですが、退社する人って、みなさん先々まで熟考して決断していますよね。でも、私の場合、50を前にしてパッと思いついて。
羽生:パッと? 旅行に行くみたい(笑)。
堀井:それこそ、定年まで会社にい続けて、幸せに「たそがれ」を迎えようと思っていたくらいで。だから先々を考えた退社ではなくて「退社してみようかな?」って感じでした。
羽生:だから著書のタイトルも『一旦、退社。』なんですね。
堀井:ただ、アナウンサーという職業はかなり特殊で、27年間、アナウンスセンターという小さなハコの中で異動もなく、同じメンバーや仕事仲間とぐるぐるしているだけというか……限られた世界で、限られた生き方、考え方しか知らない、ということへの不安があったのかもしれません。
羽生:わかります! 同じ箱の中でぐるぐる感。
堀井:そのことに気づかされた出来事があって。ある先輩の女性プロデューサーで、社内では「女性初の取締役になるんじゃないか」と噂されていた優秀な方がいました。その方がプライベートで小児がんの子どもたちを支援するボランティアをされていたのですが、そのイベントのお手伝いで、私が知人の音楽隊を連れていったんです。
そしたら、その音楽で子どもたちが癒やされている情景に感動したらしくて……プロデューサー業をぜんぶ退いて、音大に入られたんです。50歳手前だったと思います。
羽生:すごい! TBS初の女性役員と目されていた人が。
堀井:突然、学生に(笑)。この間久々にお会いして、「美香ちゃん。いま私、女子大生!」「いまドビュッシーの研究をしていてね……」と、楽しそうに語るんです。
羽生:かなり思いきったライフシフトですね。
堀井:みんなが同じレールに乗って、同じゴールをめざす会社というハコの中にいて、その先輩の姿に背中を押されたのかもしれません。
「まだ週3回でTBSに行っています」
──でも、お2人ともやっていた仕事が嫌いだったとか、不満足だったというわけじゃないんですよね?
羽生:そうなんです。「もとの会社と二度と仕事してやるもんか」みたいな気持ちはもちろんありませんし、今も「客員研究員」の立場でお仕事させてもらっています。
堀井:私も引き続き担当させてもらっている番組もあって、なんだかんだ週3でTBSに行っています。「テレワークの社員より来てるよね」ってよく言われる(笑)。