強制的な住宅エコで「パリで賃貸物件激減」の危機 エネルギー効率悪い物件は賃貸不可能になる

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フランスで厳格な不動産規制が適用されたことで、不動産業界に大きな衝撃が起きている(写真:カツ/PIXTA)

「Je baisse, j'éteins, je décale " (私は下げる、オフにする、シフトする)」――。 これは、フランスのラジオで流れている、家庭で時間や温度を調節して節電するための広告のスローガンです。ウクライナ戦争が始まってから、電気、ガス、燃料、薪など、エネルギーや原材料の値段が上がる中、フランスでは国民は政府から生活習慣を変えるように求められています。

例えばこの冬は、家庭における暖房の上限温度を17度にするよう求めているほか、学校など公共の場でも暖房の設定温度が決められています。時には室内温度が11度まで下がることもあったそうで、パリの中学校で教えるパトリシアは「こうした環境下で授業をするのはつらい」と漏らします。

エネルギー効率の悪い物件は賃貸不可能に

こうした中、フランスで今最も注目されている分野の1つが不動産です。なぜかというと、今年1月に賃貸・分譲住宅にかかわる法律が改正され、エネルギー効率の低いアパートやマンションは賃貸できなくなってしまったからです。

フランスでは2007年から、住宅に対して「住宅等のエネルギー性能診断(Diagnostic de performance énergétique=DPE)」を行っており、それぞれの住宅をエネルギーの消費度合いに基づいてA〜Gの7段階に分類し、賃貸や売買する際にはその「結果」を広告などに表示しています。今回の改正では、Gレベルに分類された中でも、年間450kWh/㎡以上のエネルギーを消費する物件は、賃貸不可能になってしまったのです(すでに昨年夏からFやGレベル物件は家賃引き上げができなくなっていました)。

さらに、残りのGレベルの物件は2025年1月、Fレベルの物件は2028年1月、そして、Eレベルの物件は2034年1月からそれぞれ賃貸が禁止される予定です。

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