強制的な住宅エコで「パリで賃貸物件激減」の危機 エネルギー効率悪い物件は賃貸不可能になる

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こうした中、物件の売却や賃貸を考えている不動産所有者はエネルギー効率改善工事をしたいと考えているようですが、工事費用が上昇していることもあり、けっして安くありません。パリ中心部にある不動産会社センチュリー21で2つの支店のディレクターを務める男性によると、例えば、45平米のワンルームの場合、改修に1万3000ユーロ(約187万円)かかるそう。

また、同じ建物でも例えば屋根裏部屋はエネルギー効率が悪いなど、部屋によってもエネルギー効率に違いがあり、自身が所有する物件に問題がないにもかかわらず、建物全体の改修工事に費用を支払わなければならないことに対する住民間のトラブルも勃発。補修工事については、政府からさまざまな資金援助もありますが、投資物件やセカンドハウスは対象にはなりません。

2023年4月1日以降、FまたはGレベルと判断された場合、エネルギー監査が課されることになり、レベルを改善するのにどのような工事が必要かも伝えられるそうですが、不動産所有者の中には「安くてもいいから早く手放したい」と考えている人も出てきているといいます。

スキーリゾートは軒並み悪い結果に

政府による突然、かつ強制的なやり方には批判の声も上がっています。特に、前述の通り、地理的条件や診断基準ややり方、さらには特例などについてはさまざまな意見が出ており、フランスメディアも熱心にこの問題を取り上げています。

例えばパリジャン紙によると、標高の高い土地にある物件はエネルギー効率が悪いと判断されやすく、ティーニュ(全対象物件におけるDPE FまたはGの比率が48%)、タランテーズ谷(同47.5%)、モルジヌ(同45.6%)と、1970〜1980年代に建てられたスキーリゾートは軒並み悪い結果に。昨年10月に住宅担当相が、DPEの結果が悪ければ、Airbnbのような観光客向けの宿泊施設も賃貸禁止の対象になると明言しており、今後大きな問題になる可能性があります。

また、「古い物件を診断するには、古い素材などに精通した専門家が必要だ」などさまざまな声が出ており、今後は法的な問題に発展するケースも出てくるとみられています。長期的にはエネルギーの効率化は必要だと多くの人が感じている。しかし自身のことになると、とりわけ、高額なお金がかかるという状況になると、不満を持つ人が出てくるというのが現実です。エネルギー価格が高騰する中、フランス人には頭が痛い状況が続きそうです。

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ドラ・トーザン 国際ジャーナリスト、エッセイスト

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Dora Tauzin

フランス・パリ生まれの生粋のパリジェンヌ。ソルボンヌ大学、パリ政治学院卒業。国連本部広報部に勤務ののち、NHKテレビ『フランス語会話』に出演。日本とフランスの懸け橋として、新聞・雑誌への執筆、テレビ・ラジオのコメンテーター、講演会など多方面で活躍。著書に『フランス式いつでもどこでも自分らしく』『パリジェンヌはいくつになっても人生を楽しむ』『好きなことだけで生きる』などがある。2015年、レジオン・ドヌール勲章を受章。公式ホームページはこちら、 Facebookはこちら

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