パリを含めてフランスには戦前に建てられた建物も多く(中には17世紀に建てられたものもあります)、そうした物件はけっしてエネルギー効率がいいとは言えません。今回厳しい規制が導入されたことによって特にパリでは多くの物件が市場に出回らなくなってしまうほか、こうした物件に投資している大家にとっては家賃収入がなくなってしまうなど懸念が浮上し、大きな問題となっています。不動産専門家の中には、今年中にはフランスにおける賃貸物件が激減するとみている人もいます。
実際、パリジャン紙によると、パリではなんと4割もの物件が、今後断熱性を高めるなどエネルギー効率の改善工事を実施しないかぎり、賃貸できなくなる対象(Eレベル以下の物件)になるとされています。不動産所有者にとってDPEによる「格付け」はまさに死活問題と言えるのです。
断熱性を向上する工事をしたのに…
DPEが2007年に導入された際には、アドバイス的な役割しかありませんでしたが、気候変動対策・レジリエンス法によってより強制的なものとなり(フランス政府は2028年までにエネルギー消費型住宅をなくすという目標を掲げています)、これによって販売や賃貸価格が左右されるほどになっているのです。
診断は150の基準(例えば、表面、窓の種類、断熱材の品質、照明設備、請求書など)によって、専門家によって下されますが、例えば戦前に建てられた物件と、最近建てられた物件を同じ基準で診断していいのか、など問題は少なくありません。
田舎に2軒の家を持ち、スペインに移住するために売却を考えているジェロームは、DPEの結果を受け取ったとき、大きなショックを受けたといいます。この2軒の家では、断熱性を上げるための大工事をしており、自信満々だったそうです。
しかし、専門家による診断をしたところ、1軒がGレベルで、もう1軒はFレベルという結果に。その後、別の診断士に来てもらったところ、今度は同じ家がF、もう1軒がGに分類されてしまいました。
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