たくさんの音符を頭の中に入れるには、勉強が必要です。でも、人は、元来とても怠け者です。「仕事が終わったら、ピーター・ドラッカーの本を読もう」と思っていても、会社の同僚から「いつもの店に、すごく素敵なスタッフが新しく入ったらしいよ。今晩、飲みに行かない?」と誘われたら、僕なら「行く、行く!」と返事をしてしまうでしょう(笑)。ドラッカーより素敵なスタッフのほうが、楽しいからです。
だからこそ、ダイバーシティが必要です。若者や女性など、「自分の頭の中にはない音符」を持っている人たちに、仕事を任せたほうがいいのです。「年功序列のおじさんたち」が集まった会社では、新しいアイデアは生まれにくいと思います。おじさんたちの頭の中にある音符は、どの人も似たり寄ったりだからです。
「愚かなのは、出口さんのほうです!」
僕がライフネット生命にいた2009年夏のことです。僕は20代の社員から、こんな提案を受けました。
「インターネットでのPR企画を考えているので、二子玉川へ行って、多摩川の河川敷に降りてください。するとそこに、『デイリーポータルZ』(ウェブマガジン)のHさんが、待ち受けています。出口さんには、3枚の紙皿に、1000万円、2000万円、3000万円と、死亡時の受取金額を書いてもらいます。そして、3つの紙皿を河川敷に置きます」
僕は、この社員が何を考えているのか、さっぱりわかりませんでした。彼は続けます。
「紙皿には、金額を書いた紙と一緒に、3種類の豆を入れておきます。すると、ハトが飛んでくるでしょう? そして、最初にどの紙皿の豆を食べるかで、Hさんが入る保険を決めるんです。つまり、ハトが選んだ生命保険に申し込む、という企画です。出口さん、撮影に立ち会ってください!」
僕は彼の話を聞いて「おまえは、アホか!」と声を上げました。
生命保険は免許事業であり、公共事業です。加入者の収入や家族構成などを考えて金額を決めるものです。「ハトに選ばせるとは、何ごとか!」と。
「ふざけるな。ライフネット生命のマニフェストをもう一度読んで、出直してこい!」
するとこの20代社員は、平然とこう言い返しました。
「愚かなのは、出口さんのほうです!」
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