しかし、問題はプーチン大統領の主張が正しいかどうかではない。西側がまったくそのようなことを考えていないとしても、ロシア自身が西側に攻撃されていると考え、自衛しなければならないと信じているならば、結局は同じことだからである。
ロシア人が祖国を破壊から守るためだと信じて戦っているのだとしたら、そして、この戦争で敗れることがロシアの決定的な弱体化を意味するとすれば、少々コストがかかるからといって、もうこの辺でやめておこうとはならないであろう。
戦争はどうやって収束しえるのか
こういう戦争において国際法に基づく「正論」を主張することはほとんど意味がない。意味がないというのは解決にはつながらないということである。残念ながら、現状は、戦場において決着をつけるしかないとロシア、ウクライナ双方が考えている状況である。
すでに始まっている大攻勢によって激化している戦闘がどのような結果に終わるのか、これが1つのポイントになるだろう。
この戦争ではロシアが勝つのか、ウクライナが勝つのかという問いかけがしばしばなされる。ロシアが勝てば何が変わり、ウクライナが勝てば何が変わるのだろうか。そもそも、何をもって勝利と考えるのかが問題となる。
ポーランドを訪問したバイデン大統領は、「ロシアがウクライナで勝つことはけっしてない」と述べた。森喜朗元首相が「ロシアが負けることは考えられない」と述べて物議をかもしたことも記憶に新しい。ロシアは勝つこともなく、負けることもないというのは案外に核心を突いた見方かもしれない。
ロシアは最終兵器である核戦力を保有しており、これを使えば単独で負けることは避けられる。つまり、相手(または全世界)を道連れにすることで、自分だけが敗北するという事態を避けることができる。これがロシアは負けないということの意味である。
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