1日2時間練習で「全国優勝」ホワイト部活の実態 東福岡高校が花園で優勝、藤田監督の指導方法

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第3回ワールドカップで日本がニュージーランドに17対145で大敗し、「何が違うのか知りたくて」、1年間現地のチームへ。そこで体感したのは、全体練習は週2日各1時間半のみ、週1日は試合、他の日は各自が必要なことをするスタイル。

「『オフがないと強くならない』『楽しくプレイする』という信念のもと、強い意志と自主性を持つ人が集まっていました」

「ひたすらラグビーをするだけではチームは強くならない」。そう気付いた藤田さんは、思い切って練習時間を絞ることに。1日の練習は長くて2時間、週1日はオフ。先のスケジュールまで出すことで、部員がデートや好きな予定を入れて、ワクワクしたりリフレッシュしたりできる時間を確保した。

「人の集中力は緊張状態で1時間半以上続かないし、楽しみも必要。ただ、練習時間が短い分、綿密にプランニングして質を高めました」

さらに、アスリートの土台は「睡眠・休養」であり、その上に「栄養」、一番上に「トレーニング」があると再認識。睡眠と休養、栄養の重要性を部員に周知し実践するための教育に力を入れ、「自分の身体は自分の会社。社長になったつもりで経営してほしい」と伝えた。

部員の自主性を重んじる

そうして監督就任から3年目、念願の全国優勝を果たした。「自主性が高まり、リフレッシュできることで選手たちが明るくなり、勝利につながったと思います」

藤田さんは選手に胴上げされて、優勝の喜びを分かち合った(写真:東福岡高校提供)

「自主性を重んじるためには、先に教え込むことが大事」と藤田さんは強調する。まずしっかり教えた上で、選手が自ら考え動くことを信じて見守る。

教えるときは「どれだけ納得させられるか」がポイントだ。「僕には人事権があるから、権力を振りかざして説得するのは簡単です。でも、そうではなく、なぜそうするのか、メリットもデメリットも示して相手が納得できるまで説明するように心がけています」

加えて、同部には20年以上続く独特の伝統がある。それは、3年生が道具の管理から部室やトイレの掃除まで、雑用をすべて担当すること。なぜだろう。

東福岡高校
部員140人ほどの大所帯。部室の掃除は代々3年生が受け継ぎ、トイレはキャプテンが掃除する(写真:筆者提供)

「1年生は新生活に慣れるのが大変なうえに、先輩にはどうしても気を遣ってしまう。雑用は3年生が引き受けて、1年生はラグビーに集中させてあげようというのが我が部のスタンスなんです。毎年3年生が自分たちの代はどうするか決めるのですが、伝統が続いています。もちろん上下関係はあるけど、みんな後輩に優しいなと思います」と目を細める。

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