【産業天気図・鉄道/バス】輸送人員は増えないが、収益体質は改善。前向き戦略も一部で始動

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●お天気概況
 少子高齢化時代に入り、本業である鉄道・バス事業の輸送人員は基本的には減少傾向にある。羽田空港の活況を背景に羽田線で輸送人員が増えている京浜急行などは例外的で、他の大手は良くて横ばいといった傾向が続いている。そのため電鉄各社の収益は不動産、流通、レジャーなどの併営事業の動向に振られやすい。営業、経常利益ベースで見ると、2005年度は増減益予想がほぼ半々で、業界全体が増益、減益の一方に振れる状況ではない。前期に不動産事業で利益を出した社が今期は反動減、逆に今期は不動産事業などで利益を出す、といった状況だ。
 これは一つには、減損処理に対応するという目的もある。減損会計は東急、相模鉄道が03年度に早期適用し、小田急が04年度に実施に踏み切った。それに対し、05年度に実施するのは東武、京成。当然ながら今期実施の社は不動産や保有株の売却益で減損処理の衝撃を緩和する必要があるわけだ。ただ、社ごとにスピードの差こそあれ、業界全般としてリストラは前期までに相当進み、各社は利益の出る体質に変わってきている、とは言えそうだ。

●今後の注目点
 ここ数年、電鉄各社は東急を始め大掛かりなグループ再編を進めてきたが、それにもほぼメドがつき、今期からは新成長戦略といった前向きの施策を打ち出す社が出てきた。そのキーワードは自社の地盤である「沿線エリアの再開発」だ。例えば、東急は沿線エリアを渋谷・山手、田園都市など4つに区分してそれぞれに応じた形で沿線の魅力を高めようとしている。それに対して、小田急は新宿、東武は業平・押上地区といった具合である。その狙いは魅力向上で沿線人口を増やすことにある。人口減少時代は目の前に来ている。今後も収益を上げるには、収益の基盤である沿線人口を他地域から奪ってでも維持・拡大しなければならない。各社がここに来て沿線開発に力を入れている背景には、こうした事情がある。
【中川和彦記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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