「摂理」は現在も日本で偽装勧誘を展開しており、2018年以降、全国の支部に当たる複数の教会が各府県でそれぞれに宗教法人格を取得している。信者数は2006年当時の2倍近い約4000人と見られる。宗教法人化については私自身が2019年に『デイリー新潮』でレポートしたが、それ以外の一般メディアでは話題になっていない。
2022年10月には、教祖が出所後に再び性的暴行を行ったとされる容疑で、韓国で逮捕された。
安倍氏の事件後も残る「不合理な慎重さ」
そんな中、状況が変わりつつあったのが2世問題だ。
安倍氏銃撃事件よりはるか前の2013年から、2世自身による手記の書籍出版が相次いでいた。2021年までに少なくともエホバ2世の手記が6冊、ヤマギシ会2世の手記が2冊。キンドルでの自主刊行ながら統一教会2世の手記もあった(『カルトの花嫁』として2022年11月に書籍化)。2世自身によるネット発信も活発化しており、2020年にはウェブサイト「宗教2世ホットライン」が開設される。
「静かなブーム」に目をつけたのか、2020年にAbemaTV(現ABEMA)が、2021年にはNHKが別々の番組で3本、2世問題を特集した。しかしいずれも団体名を伏せた。
クローズアップされたのは統一教会やエホバの2世。つまり組織的に深刻な問題を生み出してきた団体だ。しかしNHK「かんさい熱視線」の1本を除いて、組織側の問題にほとんど触れていなかった。中には、露骨に「親子の関係」に矮小化してみせる番組もあった。2世問題をネタにはするが、団体への批判に当たりそうなネガティブ要素は極力そぎ落とすという「不合理な慎重さ」だ。
そして前編で触れたように安倍氏銃撃事件後も、多くのメディアがエホバ2世による記者会見などがあっても団体名を報じない。不合理な慎重さが解除されたのは統一教会についてだけだ。
2022年2月には、「集英社マンガ削除問題」が起こる。さまざまな教団出身の2世たちの体験談を取り上げた菊池真理子氏のマンガ『「神様」のいる家で育ちました』が集英社のウェブサイトで連載されていたが、幸福の科学からの抗議をきっかけに集英社が全話を削除。3月に連載終了を発表する。
この時、「幸福の科学」を名指しした報道は、週刊誌『FLASH』のみ。文藝春秋からの単行本化がたまたま安倍氏銃撃事件後になったこともあって、この作品はあらためて注目される。ここで10月28日に毎日新聞が不可思議な記事をウェブ配信した。マンガの削除問題に触れているのに幸福の科学の名がないのだ。それでいて、記事にはこんな一節が。
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