「認証してもらえる」という見通しがあった
――1997年に宗務課長だった前川さんは、統一教会の名称変更を受け入れませんでした。名称変更の申請を受理しないのは「違法」ではないかという指摘が一部でありますが。
申請を出されたら必ず受理しなければならないのは当然のことだ。1997年当時、私は申請前の事前相談の段階で「認証はできないので、申請はしないでください」とお願いし、先方は納得のうえで引き下がった。そこに違法性はない。
宗教団体の名称も、宗教団体の実態(宗教団体性)を表す重要な要素だ。「世界基督教統一神霊協会」という名前で長年活動し、信者を集め、社会的な存在としても認識されてきた。実態と合わない名称変更は認められない。
それでも申請されれば、受理するしかない。受理したものを認証するかしないかは次の段階の話だ。申請を受理した後、認証しないケースに限って、主な宗教法人の代表者や宗教学者でつくる「宗教法人審議会」(以下、審議会)に諮問する。ところが、認証するときは審議会にかけなくていい。
不認証となれば、同じものをもう一度出したところで認証はされない。2015年の名称変更の際、統一教会が申請したのは「今回は認証してもらえる」という見通しを持っていたからだ。
――1997年、仮に審議会にかけられていたら不認証になっていたのでしょうか。
認証しないという方向で審議会に諮問したら、不認証を了解されていた可能性はかなり高かったと思う。審議会のメンバーは仏教やキリスト教、新宗教の代表者らで構成されており、統一教会に好意を持つ人はいない。
統一教会の立場からいうと、1997年の事前相談の段階で申請を出さなかったのは賢明な判断だった。申請を出して不承認になったら、元も子もないからだ。2015年の名称変更の際、認証してもらえるという確証をどこから得たのかが問題だ。認証するという保証が事前になければ、申請はできなかったはずだ。