文化庁が宗教法人と交わした「裏約束」の正体 統一教会・名称変更文書「黒塗り」の根本原因

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――2015年の名称変更のとき、前川さんは文科相、事務次官に次ぐ審議官という立場でした。

  当時の宗務課長が「統一教会の名称変更の申請がきているから認証する」と説明に来た。私が認証すべきでないと言ったら、宗務課長が非常に困った顔をしていたのを覚えている。しかし、結果的に認証はすることになったので、私の上の人が認証する意思を持っていたことになる。つまり事務次官か、大臣のどちらかだ。

認証時の事務次官は、認証直前に交代したばかりで名称変更については相談をあずかっていない可能性がある。事務次官は旧文部省出身者と旧科学技術庁出身者が交互に歴任し、科学技術系の事務次官のときは、その下にいる旧文部省系の審議官が事実上の事務次官として意思決定に関わる。名称変更時の事務次官は科学技術省系。つまり、名称変更の認証のとき、私の上には事実上大臣(下村博文氏)しかいなかった。

前川喜平
前川喜平(まえかわ きへい)/現代教育行政研究会代表、元文部科学事務次官。東京大学法学部卒業後、旧文部省入省。初等中等教育局長などを経て2016年事務次官(撮影:今井康一)

宗教法人法は「性善説」に基づく

――そもそも、なぜ宗教法人法では、認証しないときは審議会にかけるのに、認証するときには審議会にかけないのでしょうか。

 宗教法人法は信教の自由を守るためのもので、「宗教法人は悪いことをしない」という性善説に基づいているからだ。だた、オウム真理教の事件以降、宗教法人の中には問題がある団体も紛れている可能性があるという慎重な姿勢になった。

そうした中で1996年に宗教法人法が改正された。改正前は新たに宗教法人を認証しても、その後は糸の切れたタコのように動向がわからない状態だった。神社本庁や仏教の○○宗のような「包括宗教法人」は改正前から文部大臣の所轄だったが、創価学会や統一教会のような「単立宗教法人」は都道府県の所轄だった。

それでは全国的に活動している宗教法人を把握できない。改正によって単立宗教法人の所轄は、都道府県から文部大臣に変わった。

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