第2次安倍政権下の2017年。宗教団体「不二阿祖山太神宮(ふじあそやまだいじんぐう)」の関連イベントで、安倍昭恵氏が名誉顧問を務め、70人近い与野党の現役国会議員、首長、地方議員が顧問についている問題を「日刊ゲンダイ」がスクープ。偽歴史書に基づくオカルト的歴史観で「富士古代王朝」の存在をアピールする内容もあるイベントなのに、教育委員会や文科省まで後援についていた。
イベント紹介記事を掲載した一般紙はいくつもあったが、昭恵氏や政治家や行政機関の関係を報じたものはない。それどころか、地方メディアのほか、全国紙では朝日新聞社や読売新聞西部本社まで後援についていた。
2019年に、医療否定の教義を持ちワクチン接種も控えるよう指導していた「救世神教(きゅうせいしんきょう)」で、2世信者たちの、はしかの集団感染が発覚。東海地方では信者以外の人々にも感染が広がった。
当初、教団自身も行政も団体名を公表せず、一般メディアはこれに従った。団体名を特定して報じた「やや日刊カルト新聞」の記事は、鈴木エイト氏の単独スクープだった。
事件やスキャンダル含みの出来事すら大手の報道がなかったケースは、枚挙にいとまがない。おかげで「やや日刊カルト新聞」の独自記事や、その記者たちが一般メディアで書く記事は、たいてい単独スクープだった。あまり注目されなかったが。
「空白の30年」が深刻化していった後半は、第1次安倍政権のスタートと重なる。しかし安倍氏や自民党が懇意にしていた統一教会に限った空白ではない。つまり「政治の力」だけの問題ではなく、メディア側の姿勢や体質の問題も大きい。
「勧誘に注意」、でも団体名は伏せる
前編で登場した「摂理」(キリスト教福音宣教会)の問題が大きく報じられた2006年以降、全国の大学にカルト対策が広まった。一般紙が春先に「カルト勧誘に注意」と呼びかけたり、大学関係者などによる取り組みを紹介したりするケースも散見されるようになった。
ここで奇っ怪な現象が生まれる。注意喚起の記事なのに、具体的な問題団体を名指ししない新聞記事が多数発生したのだ。これでは、何に注意すればいいのかわからない。
大学関係者の間で話題に上る団体は、おおむね決まっている。オウム真理教、統一教会、摂理、浄土真宗親鸞会、顕正会などだ。niftyの「新聞・雑誌記事横断検索」で「カルト AND 勧誘 AND 注意」を検索すると、2007年以降、2022年12月19日までに154件の記事がヒットする。うち「オウム」というワードが登場する記事は3分の1程度しかない。
「統一教会」もほぼ同じで、「摂理」は21件。「親鸞会」は2件、「顕正会」1件あるが、いずれも一般紙での記事はゼロだ。
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