パッと「すぐ行動できない人」に共通する脳のクセ 3つの法則で「すごい行動力」の人になれる

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たとえば、腕立て伏せであれば、次のように分解し、実行していきます。

(1) 両手と両ひざを地面につけて、カラダを支える
(2) 両ひざを伸ばしていき、両手とつま先でカラダを支える姿勢に変える
(3) (2)の姿勢のまま、ゆっくり肘を曲げていく
(4) 腕がつらい高さまで来たら、肘をまっすぐに戻す

これで、腕立て伏せが1回できたことになります。そして、この腕立て伏せを体験したことによって、あなたの脳の中には、これらの動きに対応した脳の回路ができあがります。

すでに腕立て伏せができる人が見たら、それは「腕立て伏せに似た動き」かもしれません。でも最初は、それでいいのです。

脳の回路が一度できあがってしまえば、その動きを繰り返すことが可能になり、繰り返すほどに、腕立て伏せができる回数が増え、動きのスピードも速くなっていきます

脳がゼロから動きを覚えるには、最初はすでに知っている似た動きを手掛かりにして、ゆっくりとできることを増やしていくしかないのです。

そして、いずれは、俗に言う「カラダが覚えている」状態にまでなります。

ただし、ここで強調しておきたいのは、その動きを覚えているのは「カラダ」ではなく、「脳」だということです。

体感的には「カラダが動きを覚えた」と言いたくなるかもしれませんが、「脳が動きを覚えた(脳の回路ができた)から、意識しなくても動けるようになった」というのが、脳科学的な正しい理解になります。

法則3:速さを自覚できるまで、繰り返しやる

できないことを、あえてゆっくりやることで、できるようになったら、今度は同じことを10回くらい繰り返しやってみましょう

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そうすると、最初はゆっくりやっていたものが、次第に速くできるようになっていることに気づくはずです。やればやるほど、脳の回路の結びつきが強化された状態(脳の準備がしっかりできた状態)になります

しかし、1回できたからといって、そのまま放置すると、せっかくできた脳の回路が解消されてしまいます

脳の回路ができるまでの様子は、赤ちゃんの脳のMRI画像を観察するとよくわかります。生まれたばかりの赤ちゃんの脳は、どの脳番地もほとんど発達していません。

しかし、やがてハイハイして、さらによちよち歩きできるようになると、まず運動系脳番地が発達していきます。移動できるようになることで、ただ寝ていたときよりも、多くの情報を収集できるようになります。

目から新しい情報を得たり、耳から音を聞いたり、皮膚感覚からさまざまな刺激を受けるようになり、視覚系、聴覚系、感情系の脳番地が発達します。

新たな刺激を受けることで、赤ちゃんの脳の中では、さらに、思考系や理解系などの脳番地も徐々に発達していきます。

これが、運動系を中心に、脳のネットワークが太くなっていく脳の仕組みなのです。

脳のネットワークは、同じ動作でも繰り返すことで、どんどん強化され物理的に太くなって、より準備が整った状態になります。そして、どんどん上手に速くできるようになります

最初はできなかったことも、1つひとつゆっくりと、繰り返しやることでできるようになります。

1つでもできることが増えたら、それは準備が整った脳番地が増えて、より一層「すぐ動ける」脳になったということです。

加藤 俊徳 医学博士/「脳の学校」代表

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かとう としのり / Toshinori Katou

脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳科学・MRI 脳画像診断の専門家。1991年に、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科で脳画像研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI 脳画像診断法を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。得意な脳番地・不得意な脳番地を診断し、脳の使い方の処方を行う。『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)など著書多数。

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