日本企業の「給付型奨学金」が貧弱すぎる3大要因 若者を支援したくても、断念せざるをえなかった

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日本企業が給付型奨学金を「断念」する理由を解説します(写真:Fast&Slow/PIXTA)
「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、学生を取り巻く環境は年々厳しくなっている昨今。今や2人に1人がなんらかの奨学金を活用している時代ですが、日本の奨学金制度にはさまざまな問題があり、現場に過度の負担をかけたり、学生に不親切な状態が長く続いていました。
現場で日々向き合っている2人の専門家が、社会課題である奨学金問題について語る本連載。奨学金情報サイト「ガクシー」・奨学金運営管理システム「ガクシーAgent」を運営する、株式会社ガクシーの代表取締役・松原良輔さんが、企業による給付型奨学金が日本でいまいち普及しない理由を解説します。

日本の民間企業の「給付型奨学金」が貧弱な理由

前回の記事では、日本の給付型奨学金が欧米と比較して少ない実情について取り上げました。給付型奨学金は、その名のとおり「給付してもらえる奨学金」、つまり返す必要のないお金です。この給付型奨学金の制度が、アメリカでは5万~10万件あるのに対して、日本では1万件弱程度となっています。

とくに貧弱なのが、民間企業が提供する給付型奨学金。とはいえ、「学生を支援したい」と思っている日本企業が、諸外国と比較して少ないわけではありません。そういう気持ちがあっても、断念せざるをえない状況がこれまで存在し、結果として、現在の給付型奨学金の貧弱さにつながっているのです。

なぜ日本ではこんなに給付型奨学金が少ないのでしょうか。その理由には大きく分けて以下の3つが存在します。

①奨学金を運営する側のコストが大きい
②大学職員の負担も大きい
③情報がまだまだ整っていない

これら3つが現場視点からの大きな課題であり、壁であり、給付型奨学金を運営する企業や財団が増えない理由になっています。

まず、「①奨学金を運営する側のコストが大きい」について。コストというのは時間、マンパワー、お金のことです。これを説明するには、まずそもそも給付型奨学金はどのように作られ運営されていくかという流れを考えてもらうとわかりやすいかと思います(なお、今からする話は2010年代までの話で、2023年現在は状況が変わっています。この理由は後述します)。 

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