日本企業の「給付型奨学金」が貧弱すぎる3大要因 若者を支援したくても、断念せざるをえなかった
しかし、実際に向き合ってみると「情報が一元化されていない」という問題の根は深かったことがわかりました。プラットフォームを作って奨学金の情報をまとめようとしても、財団や運営元によっても学生に尋ねる内容(成績、親の収入状況、在籍する学校の偏差値など)がバラバラなのです。
1万~2万件の奨学金情報を登録しようとすると、それぞれが何か独自のフォーマットを使っており、項目を整理していく労力は想像以上でした。さらに1年ごとに内容が変わることもあるため、都度更新する負荷が絶大でした(現在は、テクノロジーの力で収集を効率化したりして、運営団体に自分で書き換えてもらうシステムに移行中です)。
ここは「何を聞くか」がある程度決まっており、また「リクナビ」や「マイナビ」などのサービスが普及している就活とは、大きく異なる部分です。ずっと貸与中心で発展してきた、日本ならではの現象とも言えるでしょう。実際に奨学金に関するサービスを検討したものの、取り組まなかった会社もあると聞いています。
このような現状なので、企業や財団が「学生のために奨学金を給付したい」という志と予算があったとしても「何をしていいかわからない」「わかったとしても運用のハードルが高すぎてできない」で終わってしまうケースが多く、それはとても残念なことです。大人たちの善意が、若者に届いていないのですから。
まずは奨学金情報の整理から
改めて整理すると、日本の奨学金現場が解決すべき課題は多岐にわたります。
給付型奨学金を提供する自治体や企業の数を増やすのも重要ですが、まずは、奨学金情報の整理が先決です。提供側と受ける側を結びつけるために、学生が必要な奨学金情報にたどり着くようにすることはもちろん、奨学金をやりたい企業や財団、個人が告知や応募受付をしやすくする、大学の現場の負担を減らす、給付型奨学金を運営するコストを下げる……などの問題を解決すべきでしょう。奨学金業界の非効率性を改善していくためのプラットフォームがしっかり整っていけば、奨学金を運営できる企業は自然に増えていくはずです。
JASSOの給付型奨学金や、国の修学支援新制度はすばらしい取り組みですが、前述したように現場の負担は増えて、疲弊感が漂っています。例えば、修学支援新制度の授業料減免措置の場合、大学職員が減免される授業料の計算や事務手続きをすべて行わなくてはいけません(この話については今度詳しくお伝えします)。
このような「現場に負担のかかる、非効率的な運用」は、今の日本の実情を反映しているように感じます。奨学金問題に向き合うためには「今の日本の実態」からも目を背けることができないのです。
(構成:横田ちえ)
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