日本企業の「給付型奨学金」が貧弱すぎる3大要因 若者を支援したくても、断念せざるをえなかった

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告知するのも大変です。「給付型奨学金なら返還不要だから、応募者が殺到するのではないか」と思われるかもしれません。しかし、この情報過多な時代に情報を届けることは簡単ではないですし、学生が必ず見るサイトというのもあまりありません。必要な情報を必要な人に届けるにも、お金をかける必要があります。

グーグル広告や駅に看板を出す、テレビCMを流す、とお金をかけた広報を行えばもちろん告知はできますが、そこまでお金をかけるのは現実的ではありません。そうなると、広報先は学生がいる場所がターゲットなので、必然的に大学や高校に連絡をして告知に協力してもらうことになります。中には「代わりに奨学金を出す学生を選んでくれませんか?」と、学校側に依頼する企業もあります。

疲弊する現場には、余力は残っていない

しかし、学校に頼れない現実もあります。ここで2つめの要因「②大学職員の負担も大きい」が出てきます。

大体の奨学金担当者は、従来の日本学生支援機構(JASSO)の奨学金関連の事務手続きだけでも膨大な仕事量になっていました。2020年に国による修学支援新制度がスタートしたことで、奨学金の支給だけでなく、授業料の減免業務も大幅に増え、現場の仕事はさらに倍増しました。さらにいえば、奨学金業務のみを担当している人は少数派で、大なり小なり何かしらほかの業務と並行していることが多いのが実情です。ここに企業からの何件もの奨学金関連の仕事依頼まで来ると、現場の負担は計り知れません(なお、数年後にはここに「出世払い型奨学金」が加わっているかもしれません)。

大学の現場では、奨学金運営団体から来る連絡には2通りあります。1つは「学生に対する告知だけ協力してほしい」。もう1つは「大学側で選考して○名選んで推薦してほしい」という依頼です。要は告知だけでなく、応募受付、選考まで大学側にお願いしたいというお願いです。

後者が多いのが実情で、これは本当に解決すべきところだと思います。なぜなら、民間や財団がやっている奨学金は、アメリカと比べて少ないとはいえ、2000以上にも上るからです。もちろんそのすべてから依頼されるわけではありませんが、「こういう奨学金制度を考えている」という新規の話も含めると、かなりの数の依頼が年間を通してひっきりなしに来るわけです。

大学職員も学生のためになんとか頑張りたいと思ったとしても、それにぜんぶ対応していると日常業務さえこなせなくなってしまうでしょう。広報だけなら学内のイントラネットに流せるとしても、応募受付から選考までの対応まで管理しきれません。意外と知られていないことですが、彼らの日常は本当に過酷なのです。

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