病気かも?「医療情報を正しく」見極めるコツ 「あやしい情報」に検索で騙されないためには?

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土屋:佐々木さんは「耳が突然聞こえなくなって、調べたら大きな腫瘍ができていた」とおっしゃいましたが、腫瘍は静かに進行することが多いです。MRIを撮って画像で見つけることでもしないと把握されづらい面があります。

潰瘍性大腸炎にしても、真っ赤な血がドバっと出てくると、みなさん病院に来ますが、実際は痔であることも多くて、その中にわずかに潰瘍性大腸炎が紛れ込む程度の確率なんです。

消化管出血だと、一般のお医者さんが痔や大腸憩室と判断してしまい、見過ごされることもある。その意味で、佐々木さんが最初からそう診断を下されたのはよいことだったと思います。

「情報が増えれば社会がよくなる」は間違いだった

佐々木:インターネットが本格的に普及しはじめた2000年ごろは、「情報が増えれば社会はよくなる」と希望を持って見ていたんです。

ところが、現実はそうはならなかった。「肩こりの原因は幽霊」なんてトンデモ記事を連発して、閉鎖に追い込まれた「WELQ騒動」が象徴していますが、SNSを含めて「得体の知れない情報」が多すぎる。何を信じていいのか普通の人はまったくわからない。

いわゆる名前のある著名なメディアですら、それだけで情報を鵜呑みにすることはできません。新聞でもテレビでもネットでも、医療系の情報は命や健康に直結するわりに、ちゃんとしていないものが多い気がしてしまって……。

佐々木 俊尚 作家・ジャーナリスト 1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、『月刊アスキー』編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治、経済、社会まで、幅広い分野で発言を続ける。最近は、東京、軽井沢、福井の3拠点で、ミニマリストとしての暮らしを実践。『読む力 最新スキル大全』(東洋経済新報社)、『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『時間とテクノロジー』(光文社)など著書多数(写真:梁川剛)

土屋テレビの健康番組なんかでも、医師として首を傾げてしまう内容のものが少なくありません

もちろん、あれも専門家が監修をしているとは思いますが、「わかりやすさ」を優先させすぎてしまった結果、「本質」が理解されないことも少なくないように感じます。

「医学的な情報を『新しい切り口』で伝えよう」という意気込みはわかるのですが、それが「どこまで真実を表しているか」というと、なかなか難しいのかな、というのはあります。

佐々木:僕も新聞記者だったのでわかるんですが、専門家のコメントを記事に盛り込むじゃないですか。そのときに「誰にコメントをもらうか」

よくあるケースだと、「以前に、うちの新聞に載ったことがある人」ばかり取材しがちなんです。そのほうが、いろんな面でラクだし、記者も安心できるので。

しかしその結果、「同じ先生のコメント」がずっと載りつづける傾向にあり、もしその人が「変な先生」だったら、ずっとその「変な先生のコメント」ばかり載ってしまう構造が、メディアにあるんですね。

次ページ「可能性がある」と言ったはずなのに…
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