病気かも?「医療情報を正しく」見極めるコツ 「あやしい情報」に検索で騙されないためには?
土屋:テレビだけ観ていたら、それは気づけないですね。たしかにIBD (炎症性腸疾患)でも、「日本炎症性腸疾患学会」と「厚労省の研究班」との2つが大きくあって、基本的には同じメンバーが重複していて、ある程度「共通の理解」をもとに診療や研究が進められています。
逆に、そこに関わっていない人たちの中には、「ちょっと違ったこと」を言っている医師もいる。だから、この2つのサイトを見れば、ある程度「正しい情報」にはアクセスできるんです。
ただ、「なかなかその『正しい情報』に辿りつけない」という問題や「内容がわかりにくい」という問題があるのも事実ですが。
佐々木:専門医と厚労省の周りにいる医師は、ある程度信頼できるということですね。
土屋:そうですね。IBD(炎症性腸疾患)に関しても、学会ができたのはこの10年くらいで、「きちんと診ることができる先生が誰なのかわかるようにしよう」と、この分野でも専門医制度のようなものをつくるよう推進しているところです。
佐々木:やはりそういう「仕組み」は大事ですね。あと、医療とは違うテーマの話になりますが、「ウクライナ侵攻」が起きたときも、たくさん専門家の人がテレビに出ていましたが、基本的には、みんな真っ当な専門家なんですよね。
安全保障の専門家はだいたい「慶應義塾大学」と「防衛省の防衛研究所」に集中しているんですが、そこの先生たちがテレビに出ていたんです。
コロナのときと何が違ったかというと、「ウクライナ侵攻が始まったのが2月で大学が休みだった」ことが大きかったと。だからみんな、テレビに出る暇があったという、そういうことらしいですよ。
これからの医師に求められる「発信力」
土屋:佐々木さんが本でお書きになった「『読む力』が足りない」という話もありますけど、我々医師の側にも「発信する力」が足りない。これが大きな課題だと思っています。
というのも、本当に臨床実務と専門用語じゃないと「『実際に起こっていること』を正確に反映する言葉」がないんです。だから、どうしても専門的でわかりにくくなる。
けれども、いかに噛み砕いて「正しい情報」をわかるようにするかというところに、我々医師側ももっと取り組む必要がある。
厚労省のIBD研究班でも、患者さんへ情報伝達をより早く・正確にしていこうというプロジェクトが昨年立ち上がったんです。「正確でわかりやすい情報」を、きちんと患者さんに届けようと。たまたま私がプロジェクトリーダーを引き受けることになったので、頑張っていきたいです。
佐々木:医療の専門家にとって「新しく必要な能力」って感じですね。