埼玉・小川町メガソーラー、開発地で高まる懸念 経産相から厳しい勧告受けても事業実施追求

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「被災現場のがれきをかき分け、生存者の声や合図に耳を傾けるレスキュー隊員になったような気持ちになった。ミゾゴイのさえずりが聞こえた時にはうれしかった」と小林さん。共同研究によれば、サシバの行動範囲は半径500メートル、ミゾゴイの行動範囲は半径250メートルに及び、事業計画地と重なる。「環境アセスメント手続きが終了し、工事が始まれば、調査で営巣や繁殖が確認されたサシバ、ミゾゴイをはじめ希少な生き物がいなくなることは明らか」と小林さんは話した。

国の環境アセスメント手続きの最後に事業者がまとめる「評価書」では、これら生きものへの影響の回避・低減策が示されるのだろうか。

ミゾゴイの親鳥
ミゾゴイの親鳥。抱卵中とみられる(写真:小山正人氏提供)
サシバの成鳥
サシバの成鳥(写真:鈴木邦彦氏提供)

地元の農業者などからの信頼は回復できるのか

勧告は関係機関との連携と調整を十分に行い、地域住民に対し丁寧かつ十分な説明を行うよう、強調している。

しかし、その後も地域住民の不信感を買う出来事があった。

事業計画地には、以前、ゴルフ場建設を途中でやめた別の事業者が作った調整池がある。昨年8月、数カ所の調整池の下流で農業を営む住民(70歳)が、田んぼの水がやけに多いことに気付き、調整池に行ってみた。「5号ダム」では止水栓5つのうち、3つが抜かれていたため、この住民は作業員に「これは危険な行為に当たる」と告げ、110番通報。パトカーが駆け付ける騒ぎになった。

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