米中の半導体戦争が過去の日米競争と次元違う訳 日本の事例から正しい教訓を学べるかがカギだ

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半導体不足に困るビジネスパーソン
新しい時代の新しい半導体戦争を考える(写真:mapo/PIXTA)

【特集・アメリカの経済安全保障(第3回)】

数週間前、図書館にクリス・ミラーの話題作である『Chip War』を探しに行った。最近出版されたこの本は、チップや半導体および関連技術が地政学的にどのような意味を持ち、中国とアメリカの間で進行中の競争をどのように規定するかを解説したものである。

図書館には確かに『Chip War』があった。しかし、それはフレッド・ウォーショフスキーが1989年に出版した黄ばんだ本だった。この本は2022年版と同様、チップや半導体といった技術の地政学的な関連性について書かれているが、その競争相手は日本に設定されていた。

アメリカが抱いた半導体・外国依存への懸念

ウォーショフスキーが描いた1989年の世界と、ミラーが書いた今日の世界には、確かに重なる部分がある。どちらの時代にも、半導体技術におけるアメリカの優位性は、海外との競争によって損なわれつつあり、また、完全に「公正」な競争でもなかった。日本は、世界市場で半導体を「ダンピング(不当廉売)」し、日本国内市場から外国の競争相手を締め出したと言われている。

中国は独自の国家資本主義モデルが問題視されており、M&Aのための莫大な補助金をシステムに投入したり、中国での外国企業による技術移転を「ビジネスを行うための必要経費」として強要したり、明らかな産業スパイ行為による技術窃取を行ったりしている。日中のどちらの場合も、アメリカの安全保障に不可欠な製品である半導体を外国に依存することに対する懸念は深刻であった。

しかし、日中の半導体戦争にはいくつかの決定的な違いもある。最も明白なのは、日本には現在の中国が目指しているような軍事的野心がなかったということだ。1980年代のアメリカの競争相手は、日本ではなくソ連であった。

当時、ソ連はアメリカの技術的競争相手ではなく、政治体制自体も末期状態であった。日本は、アメリカの条約上の同盟国であり、経済的な卓越性を目指していたが、世界の覇権を争うことを真剣に目指したわけではなかった。1980年代の問題は、アメリカの創造する能力の行く末に対して、手強い競争相手であった日本、台湾、韓国が挑戦してきたことであった。アメリカは半導体に関するゲームのマスターであったのに、その地位を脅かされたのである。

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