米中の半導体戦争が過去の日米競争と次元違う訳 日本の事例から正しい教訓を学べるかがカギだ

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ただ、悪いことに、アメリカはかつてのようにこれらの技術を独占することはできず、移民の受け入れも鈍化している。さらに重要なことに、アメリカは日本とのチップ戦争では産業政策の転換をせずにすんだが、中国との半導体戦争では産業政策の転換を決意しているように見える。

たとえ安全保障が第一の目的であったとしても、経済への影響は甚大となり得ることに注意しなければならない。産業政策はよく計画されたものであったとしても、先端半導体のようにイノベーションに依存し、サプライチェーンが細分化されている状況では、産業政策を成功裏に打ち出すのは難しい。

イノベーションはどこからでも生まれる(そして実際に生まれる)ため、イノベーションへの最良のアプローチは、最初の発明の段階で政治が介入するのではなく、その成功した発明を市場に出す準備ができるレベルまで「スケールアップ」させる政策が必要である。もし政策立案者が最初の発明の段階で介入するのであれば、国境を開いて他国の人たちと協働することを促進し、どこの国の才能であっても最新のイノベーションにアクセスし、誰でもそれを基に発展できるようにするのが筋であろう。

日本の事例から正しい教訓を学べるか

このことは中国にも当てはまる。中国は半導体分野で、十分に才能ある人材と巨額の投資をするだけの資金を持ち、他国に依存せずに自立できる唯一の国家であるが、イノベーションへのアクセスや、勝ち組となる企業に投資するスキルを持たなければ、西側諸国に追いつくことはできない。

2022年の中国とのチップ戦争が日本とのチップ戦争のように終わるかどうかは、日本の事例から正しい教訓を学べるかどうかにかかっている。才能とイノベーションに対する開放性を維持するほうが、産業に直接介入し、結果を管理しようとする政策よりも成功する。

(ポール・ネドー/地経学研究所客員研究員、訳:鈴木一人/東京大学公共政策大学院教授、地経学研究所長)

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『地経学ブリーフィング』は、国際文化会館(IHJ)とアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が統合して設立された「地経学研究所(IOG)」に所属する研究者を中心に、IOGで進める研究の成果を踏まえ、国家の地政学的目的を実現するための経済的側面に焦点を当てつつ、グローバルな動向や地経学的リスク、その背景にある技術や産業構造などを分析し、日本の国益と戦略に資する議論や見解を配信していきます。

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