英国の「生じる結果ごとへの対応策」とは?
本連載第1回では、私たちはますます不確実で不安定な時代に生きていくことになること、そこでは、想定内であろうと想定外であろうと、何があっても折れない、しなやかな強さである「レジリエンス」が重要になってくることをお伝えしました。
残念ながら、日本はレジリエンス後発国ですが、レジリエンス先進国では、国を挙げて「国や社会のレジリエンスを高める」取り組みを進めています。今回はそういった先進的な取り組みをいくつか紹介しましょう。
「何があっても折れない」しなやかな強さを持つためには、まず、「ぽきっと折ってしまう力を持ったもの」にはどういうものがありそうかを考える必要があります。
“レジリエンス先進国”の1つである英国では、2008年から政府が、「英国の人々が今後5年間に直面する可能性のある緊急事態」に関する最新情報を公表しています。リスクは毎年見直されます。近年の優先順位の高いリスクを見てみると、「新型インフルエンザ」「沿岸の洪水」「壊滅的なテロ攻撃」「大量のガス噴出を伴う海外での火山噴火」などが挙げられており、国民に甚大な影響を与える可能性のあるリスクを、自然災害に限ることなく広く見ていることがわかります。
2004年に英国の市民を守るための新たな法的枠組みとして制定された「非軍事非常事態法」では、「非軍事非常事態」を「英国で、市民の福利に重大なダメージを与える恐れのある事象または状況。重大なダメージとは、『人命が失われること』『病気やけが』『住む家を失うこと』『財産への損害』『お金、食料、水、エネルギーや燃料の供給の途絶』『通信システムの途絶』『輸送施設の破壊』『健康に関連するサービスの途絶』など」と定義しています。
英国政府は、「緊急時には、人々が対処しなければならないのは、多くの場合、出来事そのものではなく、その結果です。全く異なる緊急事態でも、結果の多くは共通しています。たとえば、大洪水の災害にしても、犯意のある化学攻撃にしても、その結果として、多くの人々が退去することになります」と述べています。「原因(何が起こったか)」ではなく、「結果(それによってどういう事態になるか)」ごとへの対応策を考えているのです。
昔のように、災害やリスクが想定できる時代ではなく、どのようなハザードが発生するかわからない社会となってきた現在、原因はどうあれ、生じる結果ごとへの対応策を考えることで、効果的で柔軟な対応ができると考えられます。
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