日本のハザード対応は、あまりにも旧式だ 今すぐ英国・米国の取り組みに学べ!

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

たとえば、どのような種類の災害やハザードであっても、部門やセクターを超えて効果的に連携・対応できるしくみが求められますから、米国のインシデント・コマンド・システムのような、部門横断型の危機管理システムが必須です。

自然災害の対応策のみで大丈夫なのか

米国では、「関係機関がそれぞれ異なった組織構造になっており、組織的な対応が困難」「通信装置や通信手順が統一化されていない」「関係機関の間で共通の計画を策定するシステムがない」「指揮命令系統が不明確」「関係機関が使用する用語が統一化されていない」といった状況を改善するためにインシデント・コマンド・システムを作りました。

残念ながら、現在の日本は、企業やNGOはいうに及ばす、災害対応組織である自衛隊、海上保安庁、警察、消防などであっても、いずれも独自のコマンド・システムを持っています。“米国の改善前”の状況だと言えます。タイムラインについても、特に政府が主導する動きはなく、いくつかの意識の高い自治体で準備・検討をしている段階です。

日本政府では、3・11を受けて、「国土強靱化」の取り組みを進めています(ちなみに、英語では「ナショナル・レジリエンス」と言っています)。2013年12月に「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」が成立し、内閣に総理大臣を本部長とする国土強靱化推進本部が設置され、事務局として内閣官房に国土強靱化推進室が設けられています。

担当者にもインタビューをしましたが、現在のところ、「想定しているリスクは自然災害」ということでした。英国のように、国民に降りかかる可能性のあるリスクを広く公開したり、地域での取り組みを強力に支援したり、という動きは今のところ見られません。また、米国のような、複数組織が効果的に連携するためのコマンド・システムの共通化や、タイムラインの取り組みなども見られません。

「国土強靱化というのはコンクリートで国土を固めることではありません」と担当者は言っていましたし、考え方にはレジリエンス的な要素が入っていると思うのですが、それでも、実際のプロジェクトとしては、従来型の土木工事などに主眼が置かれているように思えます。英国や米国などの先進事例の学びを採り入れていってもらいたいと強く願っています。

枝廣 淳子 幸せ経済社会研究所所長、大学院大学至善館教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

えだひろ じゅんこ / Edahiro Junko

東洋と西洋の知の融合研究所主席研究員。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。環境・エネルギー問題を機に新しい経済や社会のあり方を研究。レジリエンス(しなやかな強さ)のある幸せな未来の共創をめざし、政府委員会や企業の支援、地方創生に携わる。近著では個人の幸福度を高める生き方のヒントを紹介。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事