日本人は「本当のレジリエンス」を知らない 間違った研修やセミナーが横行している

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『レジリエンスの教科書』を翻訳した宇野カオリ氏(右)と。2人は早くからレジリエンスに注目してきた(写真:的野弘路)
最近、さまざまな分野でよく目にするようになった「レジリエンス」という言葉。再起力や逆境力などとも言われ、ビジネスパーソンがさまざまな困難に立ち向かう上で不可欠なスキルとされる。レジリエンスをどう鍛えたらいいのか。今回から2回にわたり、早くからレジリエンスを研究してきた2人の対談をお届けする。

 

枝廣:レジリエンスという言葉を日本で聞くようになったのはこの数年のことです。レジリエンスは元々「反発性」や「弾力性」を意味する物理で使われる専門用語です。ここから発展して「外的な衝撃にもポキっと折れない、立ち直る強さ」というような概念で環境問題、生態系、心理、教育、社会、防災、経済などさまざまな分野で使われるようになりました。

宇野:私は、10年ほど前に、ポジティブ心理学の発祥地である米国ペンシルベニア大学でレジリエンスを学んで以来、レジリエンスを研究テーマの1つにしています。現地では、レジリエンス・トレーニング法の習得に日本人として初めてかかわる機会を得ました。ポジティブ心理学の始祖マーティン・セリグマン教授をリーダーとして、世界中の学校や企業や軍隊などで成果を挙げている「ペン(ペンシルベニア大学)・レジリエンシー・プログラム」というものです。

注目されるレジリエンス研修

その中で、今回、翻訳に携わった『レジリエンスの教科書』(草思社)の原著で2002年に刊行された「The Resilience Factor」という本に出会いました。著作権の関係で、ペン・レジリエンシー・プログラムは一般公開されていないため、プログラムの内容を伝える本を日本に紹介することが大切だと考えたのです。

枝廣:心理学分野のレジリエンスでは定番的な一冊ですよね。

宇野:そうです。原著は2002年、ちょうど9.11(米同時多発テロ事件)の後に出版されたもので、当時の人々のマインドが反映されているところがあります。それは日本でも3.11(東日本大震災)のあとに人々が抱いた感覚と似ているかもしれません。そうした背景を踏まえて、近年、米国のレジリエンス研修が日本の企業などでも注目されるようになりました。

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