日本人は「本当のレジリエンス」を知らない

間違った研修やセミナーが横行している

いまは、何か困難なことが起きたときに、みなでなんとかするという文化が失われている地域が増えています。1人ひとりも地域とのつながりが弱く、個人的に頼れる人がいないというケースも少なくありません。このように基盤が弱くなっている対象に、外部からの衝撃は今後ますます強まる傾向にあります。そのため、個人にも企業にも、地域にも日本社会にも、レジリエンスがさらに求められるようになっているわけです。

部分的な理解が先行している

宇野:外的な要因という意味では、東日本大震災の時は甚大な被害でしたが、海外の反応としては、脅威的かつ迅速な震災復興という意味で日本のレジリエンス力が話題になりました。この時期から日本でもレジリエンスという言葉が少しずつ使われるようになったと思います。

枝廣淳子 環境ジャーナリスト、翻訳家。主に環境問題に関する講演や執筆を通じて行動変容と広げる仕組み作りを研究している

枝廣:私自身は10年ほど前からレジリエンスに関心を寄せ、海外のネットワークを通じてレジリエンスを学び、レジリエンス研究を見てきました。いつか、レジリエンスを日本でも紹介したいと思っていました。

しかし、ここ数年日本に導入される「レジリエンス」という言葉が誤解されたり、部分的な理解だけが先行して使われたりすることが多くなり、そもそもレジリエンスとはどういったものなのかを紹介したいと、『レジリエンスとは何か』(東洋経済新報社)を執筆しました。

宇野:いろいろな分野で使われる一方で、確かに誤解されたまま使われていることも多いようですね。

枝廣:たとえば、企業研修で行われている「レジリエンス研修」があります。レジリエンスという概念が部分的な理解で使われると「心が折れない社員を育成する」=「社員のレジリエンスを高める」というイメージが先行してしまう可能性もある。そうすると、その個人が仕事や職場で押しつぶされてしまった場合、「あなたのレジリエンスが低いからだ」と自己責任論になりかねません。

宇野:その点は、私も昨今の日本のレジリエンス研修ブームに感じている危険性の1つです。「心を折れなくすること」がレジリエンスの目的になってしまうと、完全に自己責任論のように取り扱われます。しかし、それは、本来のレジリエンスの目的とは似て非なるものです。それでは、正しいレジリエンス研修にはならないのです。

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