苦しい時、「好きな仕事」が助けてくれる 世界が評価する漫画家の知られざる苦悩

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高浜寛(たかはま かん)●熊本県天草生まれ。筑波大学芸術専門学群卒。著書に『四谷区花園町』、『SAD GiRL』(未邦訳)、『トゥー・エスプレッソ』、『凪渡り―及びその他の短篇』、『泡日』、『イエローバックス』、『まり子パラード』(フレデリック・ボワレとの共著)など。「月刊コミック乱 5月号」から『ニュクスの角灯(ランタン)』の連載が始まったところだ。

高浜:最近の人たちはつらいことが多すぎるのか、少し「やさぐれている」感じがします。昨日も担当編集者の方と話していたのですが、メディアに溢れている「自分の欲求を満たすための方法」を追い求めるよりも、望みどおりでないこともある程度のことは受け入れて丸く転がしていく包容力を身につけた方が、自分も生きやすいし周りもギスギスしなくていいと思うんですよ。

塩野:『泡日』の「えっちゃん」みたいな人のほうが普通な気がするんですよね。私は女性じゃないのでわからないですけれども、女性読者としてはリアルすぎて反発を感じてしまうんでしょうか。

高浜:どうでしょうか。確かに、男性のほうが受けがいい気がしますね。

敗戦国は戦勝国のまねをする?

塩野:フランスやヨーロッパではどういった反応がありますか?

高浜:日本とほとんど同じですね。でも、『トゥー・エスプレッソ』というコーヒーの話を描いたときは面白い反応がありました。日本人はなんでこんなにコーヒーが好きなのかとか、なんでヨーロッパの模倣をするのかっていう質問がたくさん来たんです。たまたまインタビューを受けたときに、やっぱり敗戦国だから、どうしてもまねをするのかもしれない、と答えました。

たとえばオスマントルコに負けた国では、トルコティーが憧れでみんな飲むようになった。幕末がまさにそうですが、近代以降の日本は西洋文化への恐れと憧れなしには成り立たなかったわけです。コーヒー好きもその延長なのではないか、と話したら、すごく納得されました。

塩野:今は新しい作品を手掛けられているそうですが、どんな作品なのですか?

高浜:19世紀末の第3回パリ万博の頃を描いています。林忠正(はやし ただまさ)さんという、日本の道具屋っていうか、個人の貿易商のような人物がいたんですね。日本の古典芸術や骨董を向こうに売って、向こうの最新の発明品やジュエリーなどを日本に持ち込むと。当時の日本の貴重なものを全部売ってしまったけれど、そのおかげで今、美術館や収集家のところにいい状態で残っているんですね。だから賛否両論あるみたいです。

塩野:ジャポニスムブームの頃ですね。フランスをはじめとしたヨーロッパで浮世絵がフィーチャーされていて……。

高浜:日本は、ヨーロッパの新しい発明をどんどん取り入れて行きました。そのエクスチェンジをテーマに取り上げながら、そこに絡む人間ドラマを描いています。3月27日発売の「コミック乱」で連載がスタートしました。

塩野: 「コミック乱」は時代劇専門の雑誌ですが、海外がそこまで絡む作品は今までなかったのではないですか?

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