高浜:少しずつ作中に差し込んでいって、だんだん読む人が増えてくれば、みんなが少しずつ知ることができるかもしれない。そういうひとつの媒体になる可能性はあるかなと思います。極端に言うと、私はテロリストの人に漫画を描いてほしいと思っているんです。
漫画は「わかりやすく」伝えられる媒体
塩野:なぜですか?
高浜:なぜかと言えば、彼らがそこに至った経緯、家族が殺されるなどつらい思いをした経験というのは、暴力という表現では見えてこないですよね。武力ではなく、私たちに見える方法で、わかりやすい方法で伝えてくれたら、共感できるところがあるかもしれない。日本人はいい国の、いい考えをする優しい人だと私は思います。
最初はまったく理解も共感もできない相手でも、きちんと気持ちを伝えてくれたら、一緒に考えてアイデアが出せる国民性だと思っているんです。だから、強い衝動や恨みを持っていたり、表現したいことがある人は、小説や漫画に託して日本人に伝えてくれたらいいと思いますね。
塩野:宗教的な要因で戦争する人から見ると、日本は衝撃でしょうね。八百万神(やおよろずのかみ)がいるわけですし、先生も描かれていましたけど、森羅万象、たとえば目の前にあるこのコップにも神様は宿っている、という世界観でしょう(笑)。究極の寛容性と言いますか……。
高浜:なんでも受け入れる土壌がありますよね。本当は神様がいないと思っていても、信じている人の話は聞いてあげることができる。だから、世界の人は日本人をもっとうまく利用すればいいですよね。
塩野:最終的にはものすごく適当なのかもしれません。たとえば「神無月」の話は私も好きなんです。神様がみんなで出雲のほうに行く月なのですが、留守神がいたり、ある神様が行くのを忘れてしまって、置いていかれて、何かやらかしたりするんですよね。ああいうのって、すごくいいなって思います。(笑)
高浜:たいていのことは受け入れてしまえるんですよね。私の作品に出てくる人物たちもそんな感じです。
塩野:今、表現者として漫画を描いていきたいという若い方やたとえば学生の方にアドバイスはありますか?
高浜:たとえば60歳になった時に、どんなポジションでいたいかを最初から考えていると、続くと思います。現時点で見えているものに振り回されると、モチベーションが続かないんですよ。同じ世代で同時期にデビューしたけれど、もう描かなくなった人たちも結構いるんです。特に女性は、結婚すると続きにくいということもあります。周りの同期が有名になったり、作品が映画化されたりすると「わー、どうしよう」と思うんですよね。私もそういう時期がありました。
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