欧米で進む「レイオフの波」日本にもやってくる? 2023年エンジニア採用トレンドはどうなるのか
高野:それに対し、日本は規制が厳しく社員を解雇しづらいこともあり、欧米ほどドライな働き方が浸透していません。しかも日本は少子高齢化で労働人口が減少しているうえに、エンジニアなど特定の技能を持つ人材はさらに限られます。いつでも欲しいときに人材を採用できるアメリカに対し、日本は絶対的に人が足りていないのです。
ですから日本の企業は、そう簡単に大幅な人員削減や採用抑制に走るわけにはいかない。アメリカで今起こっていることが日本でも起こる可能性は低いと考えるのが妥当でしょう。
景気変動と日本のニーズの関係
──日本のエンジニア不足については、経済産業省の調査(*)で「2030年にはIT人材が最大で79万人不足する」との試算が出ているほどですから、日本における採用ニーズは多少の景気変動には影響されないということでしょうか。(*)経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」
高野:今後アメリカがリセッション(景気後退)に入った場合は、アメリカに本社を置くグローバル企業の日本拠点でも、一時的に求人を減らすなどの対応をとる可能性はあります。また外資系投資会社が日本のスタートアップへの投資に慎重になり、その影響で国内のスタートアップ企業が採用に消極的になることは考えられます。
ただ、それでもエンジニア職種については軽微な影響にとどまると思います。現時点でも国内のエンジニア不足は深刻で、多くの企業は人を増やしたくてもなかなか採用できず、IT人材の確保に苦労しています。
加えて日本の場合、転職市場におけるエンジニアの求人数で大きな割合を占めるのは、受託開発を手がけるSIerやITコンサルです。このビジネスモデルは人が多いほど受託できる案件も増え、会社の売り上げが伸びる構造なので、不景気でも業績を維持したいなら、なおさら人員は減らせないでしょう。