米ハイテク企業で始まった「大量解雇」真の理由 メタボのシリコンバレーが突入したダイエット
時価総額が740億ドルの決済スタートアップ企業、ストライプが今月、従業員を1000人以上レイオフ(一時解雇)したとき、共同創業者は自らを責め、次のようにコメントした。「業況を考えると雇いすぎていた。私たちは楽観的すぎた」。
ツイッターの新たなオーナーとなったイーロン・マスクが11月上旬、従業員の半数を解雇し始めると、同社の共同創設者で元CEOのジャック・ドーシーは自らの責任を認め、こうツイートした。「私は会社を急拡大しすぎた」。
そして今月9日、フェイスブックとインスタグラムの親会社であるメタが従業員の約13%にあたる1万1000人を削減すると発表したとき、CEOのマーク・ザッカーバーグは行きすぎた事業拡張の過ちを認め、従業員向けのレターにこう記した。「私は投資を大幅に増やす決断をした。残念ながら、私が期待した結果とはならなかった」。
急増する解雇を引き起こしたのは
「人を雇いすぎた」と認めるテック企業経営者の声がこだまする
シリコンバレーで人員削減が勢いを増す中、悪者扱いされているのは「景気の悪化」だ。
だが、急増する解雇は半ば自ら引き起こしたものでもある。利益の急増を満喫していたテック企業は、パンデミックの巣ごもり需要がもたらした好景気が続くという思い込みから、ソフトウェアビジネスで最も争奪が激しい「人材」という貴重な資源を大量に抱え込むことで、事業を積極的に拡大した。
シリコンバレーのハイテク企業は以前から、採用を単に空きポジションを埋める以上の活動と見なしていた。熾烈な人材争奪戦の中で、グーグルやメタといった企業はピカピカのエリート人材をじゃんじゃん獲得。急増する従業員数と、大学新卒者の就職人気ランキングの上位に長く君臨することは、成長性、資金力、名声を象徴する勲章だった。従業員にとってもテック業界で働くことは、仕事を超えたアイデンティティーとなっていた。