米ハイテク企業で始まった「大量解雇」真の理由 メタボのシリコンバレーが突入したダイエット

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「彼らが猛烈に推し進めてきた計画は、もはや現実とはかけ離れたものになっている」と、採用ソフトウェア企業のレバーで採用担当の責任者を務めるケイトリン・メッテアは語る。

今では多くの人々が、この景気後退は長引くと考えるようになっている。その背後にあるのが、景気後退をもたらしているマクロ経済的な要因だ。過去10年にわたる低金利の中で投資家は、より高いリターンを求めて一段とリスキーな投資先に資金を振り向けるようになっていた。こうした投資家は利益よりも急速な成長を評価し、大きなリスクを取る企業に報いてきた。

そしてテック企業は近年、投資家から湯水のように流れ込むキャッシュと急成長する事業に対応し、営業やマーケティング、採用、企業買収、実験的なプロジェクトを通じた企業拡大に巨額の資金を費やしてきた。カネ余りが人員増を促し、人材の奪い合いに拍車をかけた格好だ。

「ベンチャーキャピタルが望む投資を正当化できるような速い成長を成し遂げるため、とにかく急いで資金を使わなければならないというプレッシャーがあった」。アマゾンが買収した人工知能ソフトウェア会社、ボディ・ラブズを共同で創業した起業家のエリック・ラクリンはそう話す。

従業員数の拡大は、管理職が出世する手段にもなっていたとラクリンは言う。「チームの人数を増やすほうが、周囲に『もっとハードに働け』と命じるより楽だからだ」。

「働かない高給取り」が蔓延

こうしてテック企業は、「肥大化」で有名な場所となった。1日に数時間しか働かない従業員、無料のランドリー、マッサージ、有名シェフによるカフェテリアといった贅沢な複利厚生の存在が頻繁に話題となった。しかし、今年の春にメタはランドリーサービスをはじめとする福利厚生のカットに動いている。

これまでならテック企業の人材は解雇されてもすぐに再就職先が見つかった。空きのポジションが大量に存在したからだ。しかし「今回のレイオフの波の中でも、全員にそれが可能なのかどうかはまだわからない」とラクリンは言う。

そうした状況下、厳しい就職戦線に初めて投げ込まれる人々の支援がビジネスチャンスになると考える人々も出始めている。調査・コンサルティング会社のガートナーやセールスフォースで営業・戦略のキャリアを積んだスティーブン・クーソンは、多くの友人がレイオフでつらい経験をするのを目にして、就職面接の準備支援コースを立ち上げた。採用バブルしか知らない現在の求職者の多くは、これまで就職面接のスキルを磨く必要などなかったが、状況は変わった。

「採用環境も面接スキルも改善には時間がかかるだろう」とクーソンは言う。

(執筆:Erin Griffith記者)
(C)2022 The New York Times

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