米ハイテク企業で始まった「大量解雇」真の理由 メタボのシリコンバレーが突入したダイエット

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大学並みの豪華なキャンパスを構え、多数の特典や諸手当が提供される大手ハイテク企業に刷り込まれていたのは、そうしたメンタリティーだ。ストックオプションの一攫千金で人生を変える富を手にするチャンスを従業員の鼻先にぶら下げる小規模なスタートアップ企業も似たようなものだった。

ところが、こうした慣行は今、テック業界に消化不良をもたらしている。

「羽振りがいいと人間は過剰になる。過剰は雇いすぎと楽観につながる」。ベンチャー投資を行うラックス・キャピタルのジョシュ・ウルフは「ここ10年の有り余るキャッシュが大量採用につながった」と語る。

ハイテク業界では10万人以上が失職

レイオフの状況を追跡しているサイト「Layoffs.fyi」によると、今年に入ってからハイテク業界では10万人以上が職を失っている。人員削減はメタ、セールスフォース、ブッキング・ドットコム、リフトといった有名上場企業から、宅配サービスのゴーパフ、金融プラットフォームのチャイムやブレックスといった高い企業価値を持つ未上場企業まで広範に行われている。

人員削減の多くは、テック業界の中でも最も実験的な企業で起きている。11月に16%の人員削減を行ったロケット会社のアストラは昨年、従業員数を3倍に増やしたばかりだった。

今年に入ってメルトダウンに見舞われている暗号資産(仮想通貨)業界では、企業価値の高いクリプト・ドットコム、ブロックチェーン・ドット・コム、オープンシー、ダッパーラボといった企業が、ここ数カ月で人員を何百人と削減した。

景気減速の兆候は今年春には現れていたが、テック企業には過去何年にもわたって大量採用を続けてきたところが多く、対応が後手に回ったとアナリストらは指摘する。

一時は時価総額が1兆ドルを突破したメタは、過去3年で従業員を8万7314人に倍増させ、株式取引アプリのロビンフッドは2020年と2021年に従業員数を6倍近く増やしていた。

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