まず、歯茎をメスで切ってめくりあげ、細菌を除去した後に歯周組織の再生を促すタンパクや人工骨などを注入する。手術は局所麻酔が必要で1時間半におよぶうえ、最低でも半年間のフォローアップが必要となる。「歯周再生療法はどこでもできる治療ではなく、最良の結果を望む際には保険適用外になることもあります」と二階堂さんは言う。
歯周病治療は、軽度であればブラッシングや定期健診時のスケーリングだけですむ。患者の負担を考えたら悪くなる前に診てもらい、いい歯や歯茎を維持することが何より大事だ。
歯周病は単に口の中の問題ではない。冒頭でも触れたが、歯周病は全身疾患との関係が指摘されているからだ。
これまでに関連が報告されているものとしては、糖尿病や脳梗塞、心疾患、慢性腎臓病、呼吸器疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、がん、認知症、早産・低体重児出産など。とくに糖尿病と歯周病は、お互いに悪影響をおよぼし合っていると考えられており、脳梗塞では歯周病の人はそうでない人の2.8倍なりやすいことがわかっている。
いい歯科医の選び方とは?
歯周病を治療し、歯の健康を保つことは、全身の健康にとっても重要であるということだ。
最後にいい歯医者選びについて、二階堂さんに聞いた。
実は、歯医者に行けば何でも診てもらえるとは限らない。というのも、歯科にも専門があり、むし歯の治療を専門にする人(歯を残す治療、抜く治療でも分かれる)や矯正を専門とする人、歯周病治療を専門とする人などにわかれているためだ。
一般の歯科クリニックでは、当然ながら「全部診てくれる」が、もともとの専門性が治療方針に影響してくることも少なくない。
では、歯周病を診てもらう場合はどうしたらいいか。
「日本歯周病学会のホームページに専門医の一覧が載っていますので、参考になると思います。歯周病治療には高い専門性が必要になりますが、最近では近くの歯科クリニックでも専門を取っているケースが増えているので、適切な治療を受けられると思います」(二階堂さん)
歯並びも歯の白さも気になるが、それは“歯があればこそ”の話。まずはいつまでも自分の歯を残せるよう、歯と歯茎の健康にも注意していきたい。
(取材・文/佐々木由)
二階堂雅彦歯科医師
1981年、東京歯科大学卒。同歯科麻酔学教室、タフツ大学歯学部(アメリカ・ボストン)歯周病学大学院留学、東京歯科大学水道橋病院臨床教授などを経て現職。1997年からアメリカ歯周治療専門医、2003年からアメリカ歯周病学ボード認定医、日本臨床歯周病学会指導医。所属学会はアメリカ歯周病学会、アメリカインプラント学会、日本歯周病学会、日本歯科麻酔学会。著書に『日本人はこうして歯を失っていく 専門医が教える歯周病の怖さと正しい治し方』など。
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