同期入社の新人研修が担う強烈な仲間意識の形成 小田嶋隆「それほど、われわれは、友だちにヨワい」

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新入社員研修
若き日の小田嶋隆氏に新入社員研修は「友情製造装置」に見えた(写真:ふじよ/PIXTA)
友だちがいるって本当はウソなんじゃないのか。
友だちの友だちは他人。人と人とがいともたやすくつながってしまう、そんな世の中で、はたして友だちとは何だろう?
2022年6月に他界したコラムニストの小田嶋隆氏が、自ら代表作と明言していた小田嶋隆クラシックス3部作、第2弾『小田嶋隆の友達論』から一部抜粋、再構成してお届けします。
<※本書は2015年に太田出版から刊行された『友だちリクエストの返事が来ない午後』を底本としています>

小田嶋隆が受けた新入社員研修

1980年代は、専門の人材育成機関に新入社員の教育を代行させることが流行していた時代で、私が新卒で就職した会社も、ご多分にもれず、そのテの研修施設の新入社員研修プログラムを導入していた。

研修のカリキュラムは「地獄の○○日間」といった調子のスパルタ式のもので、これも当時の流行だった。

表向きは、アメリカの産業社会学者や社会心理学者の理論を援用している。が、中身は、要するに、昔ながらのシゴキだ。新入りにはブートキャンプ。効果があろうがなかろうが、型通りの通過儀礼はクリアしてもらわないと困る。でないと、闘う男たちの結界(けっかい)が維持できないというわけだ。

しかも、シバけばシバくほど、人間の能力が拡大するということを、研修を推進する側の人間たちは、半ば本気で信じ込んでいる。そういう意味では、人材だけが使い減りのしない資産であるという経営者の見る夢の中身は、今も昔も、ほとんどまるで変わっていない。

もちろん、そんなお話は幻想で、早い話、シバいても潜在能力を開花させない側の半数の社員は、シバけばシバくだけ疲弊して行く。行って来いだ。

私はといえば、研修の初日で会社を見限った。まあ、会社にしてみれば、ごく早い時期に不良在庫を整理できたわけで、つまるところ、私と会社は、Win-Winだったのかもしれなかった。

今でもよく覚えている。研修の冒頭で、教官に当たる人間は、以下のような演説をカマした。

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