就職活動「ガクチカ難民」たちのかくも深き悩み いまだに「アルバイト」をアピールするわけ

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実際、大変興味深いことに、この学生と企業の思惑のギャップは埋まるどころか、開きつつあるようにすら思える。2022年にネオキャリアが行った最新の調査によると、「ガクチカの内容」として、ダントツの1位が「アルバイト」で、実に全回答者の61%、また2位に「サークル・部活」・「ゼミ・学業」をあげた学生が39%に上る。

なぜ、このギャップは埋まらないのか。

なぜ、企業は「評価しない」と表明しているにもかかわらず、学生たちはそれを「アピール材料」として使おうとするのか。

そう不思議に思う方々は多いのではないだろうか。

だが、学生たちには「アルバイト」「サークル」をアピールする確固たる根拠がある。彼らはその根拠に守られている。

それは「直近の先輩たちがそれで内定をもらったから」だ。

先輩が(そしておそらく同期も)それで内定をもらっているのに、なぜわざわざ自分をさらけ出す必要があるのか。自分をさらけ出すことほどハイリスクな行為はないと感じる学生たちにとって、そうしなくても大丈夫、という事実は、何より信頼に値する。

それでは、企業の採用担当者はどうすればいいのか? どうすれば、学生の人柄や会社との相性、仕事への熱意、将来のイメージ等を知ることができるのか?

「特区制度」を設けるのも一案

そのためには、①人事部の固定観念を捨てる、②他部署や上役への配慮をやめる、という2点は避けては通れない。結局「意欲のある学生が来てくれない」と言う採用担当者は、実は学生の本質を見極めることを人事プロセスの優先事項としていない場合が多い。では他に何が優先事項となっているかというと、主に社内調整だ。人数合わせや上司への配慮などが優先的にプロセスの中に組み込まれていく。

したがって、そのような状況では人事プロセスそのものを一気に見直すことは難しいだろう。そこで、別枠の特区制度を設けることを提案したい。少数でもいいので、人事担当の裁量で学生を評価できる枠組みを作り、経験値を積むことが重要になる。

人と向き合う仕事は、ナイーブで、差し障りが多く、留意事項ばかりで本当に難しい。同性・同世代でもそうなのに、性別や世代が違うとなおさらだ。でも、だからこそ、少しでも楽しく学び、実践できればと思う。

金間 大介 金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授

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かなま だいすけ / Daisuke Kanama

北海道生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士)、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、 東京農業大学准教授、金沢大学人間社会研究域経済学経営学系准教授、2021年より現職。主な研究分野はイノベーション論、技術経営論、マーケティング論、産学連携等。著書に『イノベーションの動機づけ:アントレプレナーシップとチャレンジ精神の源』(丸善出版)、『イノベーション&マーケティングの経済学』(共著、中央経済社)など。

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