増え続ける退職者を賄うのは不可能?
急速に進む高齢化によって、近い将来、公的年金制度が破綻するだろうという話は、誰もが何度か聞いたことがあるのではなかろうか。
このような発言の源となる研究を行っている経済学者たちは、洗練された数式やモデルを使って同じ主張をするが、その理屈はさほど難しくない。近代の年金システムが登場した当時、65歳まで生きられる人は3人に1人しかいなかったが、現在その数は10人中9人になった。そのため「現在の公的年金制度では増えつづける退職者を賄うこと」は不可能だというものだ。
一見、明快で当然のことのように見えるが、この主張は偽りだ。この主張を何度繰り返そうが、公的年金の未来を危うくするのは国民の高齢化という人口問題だとするのは間違っている。
公的年金制度に人口がかかわっていることは明らかであり、とても重要な点だ。直接的には、年金受給者の人数と年金を受け取る期間、間接的には、年金の財源となる社会保険料やその他の税金を収める人口だ。しかし、いかなる人口変動も「公的年金は支給ができなくなる」要因ではない。そのことを証明する理由はいくつもある。それらの理由を大きく3つのグループに分けて説明しよう。
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