銀行が「お金を右から左に流しているだけ」の嘘 借金が多ければ多いほど経済危機は頻繁に起こる

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銀行
銀行が貸し出すお金は顧客の預金からだけなのか(写真:KazuA/PIXTA)
「Econofakes エコノフェイクス」とはスペイン・セビリア大学応用経済学教授であるフアン・トーレス・ロペスがつくりだした「経済のウソ」という意味の造語だ。
「経済学は、難解で抽象的な数式で提示されると、科学的で議論の余地のない真実のように見える。しかし、経済学には『科学』で存在するような普遍的な『法則』が必ずしも存在していない。実際は仲間内で権威を与え合う経済学者たちのゆがんだイデオロギーによって導き出された『ウソ』に満ちあふれている。そして、この『ウソ』によって権力や富が一部に集中するシステムが正当化されているのにも関わらず、多くの人はそのことに気づいていないのだ」とトーレス教授は言う。 
それでは、その「ウソ」とはいったいどんなものなのか? そして「ホント」とは? トーレス教授の著書『Econofakes エコノフェイクス――トーレス教授の経済教室』より一部抜粋、再構成して全5回連載。第2回をお届けする。

通貨に関する2つの大きなウソ

★ウソ 貨幣は単なる交換の媒介物で、その仲介役の銀行は預金貸付を行うだけ

世界中で使われている経済学の教科書には通貨について、2つのウソが書かれている。

1つ目は、通貨を単に、①交換手段、②価値を表す単位、③価値を貯めるものと定義していることだ。

たしかに通貨にはこれら3つの機能がある。もし通貨のこの側面だけを見るなら、通貨とは中立的なもので、市場で絶えず過不足ない適量を流通させることだけが問題の交換手段だといえる。

だとすれば、その問題は完全に技術的なものであり、金融当局(具体的には中央銀行)に任せればいい。そして、もし国民の代表である政治家の介入を許せば不適切に流通通貨の量を増やすことになってしまうかもしれないということになり、そうした口実をもとに、介入を阻止できる。

2つ目は、銀行とは単なる金融取引の仲介者であり、マンキューやその他の経済の教科書に書かれているように、その主要な役割は「貯金をしたい人に預金してもらい、お金を借りたい人にそのお金を貸し出すこと」であると定義されていることだ。

この2つのウソの内側を探り、それらが私たちの日常生活にどんな影響を及ぼしているかを見ていこう。

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