ところが、1980年代から1990年代にかけて自由化を求める声が復活し、ほぼすべての国において、それまでの制限が解除された。すると再び銀行は、多くの場合、顧客自身すら気づかぬうちに、商業的な業務とよりリスクの高い投機的な投資とを組み合わせるようになっていった。そしてまた、2007年に端を発した大きな金融危機が起こったのである。
無からお金をつくりだせるという特権のおかげで、銀行は常に絶大な力を握ってきた。しかし、さらに顧客の預金を使って投資することもできるようになったことで、影響力と決定力を手に世界を支配する巨大な権力の座についたのだ。銀行が支配する領域はもはや金融システムだけでなく、人々に思想を植えつけて社会を服従させることができるメディアをはじめとするすべての産業、さらには政治組織や司法機関にまで及んでいる。
したがって、銀行が単にお金を右から左へ流しているだけだというのは誤りである。実際は、銀行こそが権力者で、金融市場だけでなく世界中の市場に関与している。銀行はたくさんの触手で経済、政治、文化、社会的価値までも支配しているのである。
そのウソがどんな結果をもたらすか?
このようなウソが人々の生活に及ぼす影響ははっきりしている。
通貨の変動はすべての財やサービスの価格に一様に影響を与えるので、通貨は中立的だとすると、通貨をつくりだして流通させるときの変化とともに必ず起こる分配への影響を無視することになる。
ここ30~40年の間、人々は、お金に関する問題は専門性が高いので、金融当局が完全に独立した形で担うべき分野だと信じ込まされてきた。そのため、通貨政策がどれだけ人々に大きな不平等をもたらそうとも国民は精査をしようとはしない。
つまり、社会的に影響力のある特定の集団にだけ利益をもたらす政策が国民全体にも適切な政策であると認めてしまっているのだ。人々が信じ切っていれば、どんなに不平等な通貨政策であろうと、国民の間で議論がわきおこることはない。
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