仏教に救われた「LGBTQの僧侶」が修行で得たもの 紅白歌合戦の審査員も務めた西村宏堂さんの生き方

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今年9月、西村さんは、海外での出版のプロモーションのためにヨーロッパで4カ月を過ごした。そして、今後も日本にとどまることなく、ヨーロッパも拠点にしたいという。

「日々、活動をするうちに、世界の今を学び、もっと成長したいという想いが湧きあがってきました。日本では多様性やLGBTQのことを伝える立場にありますが、私自身ももっと学んで、自分を追求し続けることが必要だと感じたんです」

今回ヨーロッパで学んだことは、会社などで多様性が重要視されるあまり、能力ではなく多様性を補うために雇用されるという新たな問題が生まれたこと。また性的マイノリティーへの理解は進んでいるが、トランスジェンダーだけは女性トイレや更衣室を利用することについてなかなか理解されていない現状を学んだ。

日本からボストン、そして、ニューヨークへ。一度日本に戻った後、今度はヨーロッパへ。今いる場所に安住せず、定期的に新天地を求めて大胆に動き続けるのは、西村さんが経験から体得した人生戦略でもある。

「人生の折々でたくさんの花を咲かせるには、種まきはもちろん、そのときの自分に合う植木鉢への植え替えも大切です。人間は経験を積むほど育つものなのに、ずっと同じ小さい鉢に自分を閉じ込めていたら、いつか根腐れを起こすと思う。その時々、自分のスケールに合わせて、思い切って広い世界に飛び込んでみたら、自分の根っこも太く長くなるし、新しい面白いチャンスに巡り合えるから」

勇気を出して動くたびに、人生には、新たな蕾が増えることを西村さんは知っている。

差別はきっとなくならないけれど……

「これからも、皆さんが前向きに生きられるようなメッセージを届けたい。社会の期待から自由になって、それぞれが自分の人生を生きられるようなお手伝いがしたいです」

正々堂々 私が好きな私で生きていいんだ
『正々堂々 私が好きな私で生きていいんだ』(サンマーク出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

これからの夢について尋ねると、笑顔でさらりと言い切る。しかし、「差別とは普遍的なものであり、地球が終わるまで完全にはなくならないでしょう」とも。

「無知で理不尽な判断をしてしまうことは人間らしさでもあると、これまでの経験を通じて学びました。それでも諦めずに働きかけていくこともまた、生きる喜びだと思います。

一方、個人としての幸せも大切にしたいし、大切にしてほしい。差別があろうとなかろうと、幸せの本質は“自分らしくいられて、誰かと理解しあえること”だと思うから」

ヨーロッパでは著書の各国語版のプロモーションのため、フランスとスペインにもしばらく滞在して、トークツアーを開催した。スペインでは、テレビ、ラジオをはじめ、3日間で17ものメディアに登場するなど目まぐるしい日々だ。

さらに、2022年の紅白歌合戦ではゲスト審査員を務め、彼の著書『正々堂々 私が好きな私で生きていいんだ』は重版が決まるなど、日本でもますますの注目を集めている。

“ハイヒールを履いたお坊さん”の唯一無二の快進撃は、これからが本番だ。

芳麗さんによる連載6回目です
芳麗 コラムニスト

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よしれい / Yoshirei

NHK山形放送局のキャスター業を経て文筆業に。女性の生き方をメインテーマに、雑誌、書籍、Webなど数多くの媒体で執筆。人物を掘り下げたロングインタビューを数多く手がけるほか、恋と愛、生活、カルチャーなどにまつわるコラムも好評。著書に『3000人にインタビューして気づいた! 相手も自分も気持ちよくなる秘訣』(すばる舎)、『ラブ・リノベーション』(主婦の友社)など。音声番組Voicy「芳麗の女と文化の話café」では、本連載に登場した方々とのリラックストークも。日々の生活や取材活動から、生きづらい時代を“幸せに生きるヒント”を多面的に探究して発信中。HPはこちら

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