東京の中心部、西村さんの生家であるお寺を訪ねると、印象的な装いで迎えてくれた。
古くなった僧侶の伝統的な袈裟を現代的にアップサイクル(捨てるはずだった製品を新しい価値を与え再生させること)したもの。鮮やかな色合いの袈裟にイッセイ ミヤケのモードなパンツや煌びやかなアクセサリーの組み合わせは、不思議と調和が取れて美しい。
「今日は室内なので履いていませんが、普段はここにハイヒールを合わせることも。世間の方々が見たことない姿で街を歩いて、驚かせるのは私の役割だと思っています。驚かせるだけでなく、『こんなふうに自由に発想したり、装ってもいいんだ』と誰かが新しい一歩を踏み出すきっかけになれたらいいなと。
社会の中で生きていると、知らず知らずのうちに自分を狭いおりに閉じ込めてしまいがち。多くの人は『普通の人は』『こう生きるべき』なんて価値基準にとらわれ、自分の本心や本質にふたをしてしまう。私は、そんなみなさんの心のふたを開く手伝いをしたいんです」
“自分の心にうそをつくことは罪である”
仏教の戒律から学んだこの教えを、彼は大切にしている。彼自身が過去に長い間、自分にうそをついて苦しんできた経験があるからだ。
「18歳までは同性愛者であることを誰にも打ち明けられませんでした。きっと理解してもらえないし、見下されたり、差別されることが怖かったんです」
現在、33歳。今や世界から脚光を浴びる“時の人”となった彼も、「これまでの人生の3分の2は暗黒の日々だった」という。
では、いかに人生の暗黒期から抜け出して、自分らしい自由な生き方を手に入れ、光ある場所へとたどり着いたのか。西村さんの思考と経験からは、自己実現して生きていくためのヒントが得られるはずだ。
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