「もう私から母に連絡をとることはないと思います。今は私の居場所も連絡先も伝えていません」
そう語るのは遠藤佳乃さん(仮名・40代前半)。
きっかけはかつて体験した壮絶な中学受験。それがしこりとなって残り、親子関係は今や断絶してしまった。
中学受験から30年たっても癒えない傷。彼女に何が起きたのか、当時を振り返ってもらった。
受験で親子関係断絶まで至った経緯
東京から電車で90分、改札1つの小さな駅は降り立つ人も少ない。筆者を出迎えてくれたのは和服姿の女性だった。
「宮本さんですか? 初めまして遠藤です。遠いところまでありがとうございます」
目を細めてそう話す彼女からはマスク越しでも優しさがにじみ出る。遠藤佳乃さん(仮名・40代前半)。彼女は、母親から幼少期にうけた仕打ちに今も苦しめられていると話す。
佳乃さんが育ったのは東京まで電車で1時間ほどの首都圏エリア。一家は規模の大きい団地に暮らしていた。地元には中学受験をする子はほぼおらず、東京都出身の母親は高卒、北海道出身の父親は中卒で、それほど学歴志向でもない。2歳違いの兄も中学受験をする様子もないため、まさか自分が私立の中学受験をするなどとは全く思っていなかった。ところがだ。佳乃さんが小学4年生になると、母親は突然、中学受験のプレゼンを始めた。
「あなたは見た目もデブだから、近くの中学に上がったらきっといじめられる。中学受験をすれば、高校受験もしなくて済むし、もしかしたら大学だってそのまま行けるかもしれない。受験を1回するだけで済むから楽なんだって。やってみない? 中学受験」(母親)
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