社員3分の1をリストラ「東スポ」が復活を遂げた訳 オールドメディアの果敢なる"挑戦の物語"

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求人情報一つとってもすでに媒体選びと伝え方に大きな変化が訪れている。同時に、「東スポブランド」は十分社会に認知されていることも理解できた。東スポにもある種のブランド力があったのだ。実はここに東スポが復活する一つのヒントがある。

ちなみに、noteでの新卒募集では新卒と中途合わせて十数人を採用。2022年4月から、これまでの東スポとは少々趣の異なった人材が生まれ変わった東スポで働いているのだ。

東スポに「人事部」が爆誕

驚くことに、これまでの東スポには人事部が存在しなかった。ではどのようにして人事が行われていたのか。それは部長同士の胸先三寸で決まっていたという。

例えば、「レース部」や「野球部」の部長が、「今年、レース部の〇〇を野球部に入れたいけど、どう?」や、「野球部の〇〇をレース部に異動させるから、△△を野球部に出してほしいんだけど……」といった具合であった。

しかし、昨今の企業活動で、全体のガバナンスが利いていないということは、その企業の社会的信頼を貶めることはあれ、決して高めることはない。そこで、東スポ社内には創業以来、初めての「人事課」が誕生する。

時代に応じた社内改革によって、はたしてこれまで持ち続けてきた東スポの独自性や東スポらしさは保てるものなのだろうか? それとも失われていくのだろうか? こればかりはある程度の時間を経たうえで審判が下されることになるのだろうが、新しい人材を確保し、企業運営を進めていく際には、過去のような人事体制はもはや時代にそぐわないということも事実だろう。

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人事課の新設も含め、東スポにはさまざまな変革の波が押し寄せている。その荒波の中にあっても、前述のように、決して失ってはいけない東スポらしさ、東スポの魅力とはいったい、どこにあったのだろうか。

平鍋氏にとって東スポらしさとは何ですか? と率直に尋ねてみた。

「やはりエンターテインメント性、面白いことに尽きますね。ビールを飲みながら東スポを見て、『この新聞はまったくしょうがねえな』といって笑いあう。あるいは競馬の予想をして、『明日の天皇賞、どの馬がくるかな』など。それが東スポ流のエンターテインメントです。

そして、ビールと一緒に餃子がある。そのイメージから、『東スポ餃子』のプロジェクトが始まったんです……」

かつて「日付以外、正確な記事はない」と揶揄された東スポが、そのポジションと愛すべきキャラクターを見事、逆手に取り〝東スポブランド〞を確立して復活したのだ。

岡田 五知信 テレビプロデューサー

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おかだ さちのぶ / Sachinobu Okada

早稲田大学卒。徳間書店『週刊アサヒ芸能』編集部や新潮社『フォーカス』編集部で編集記者を経て、1992年に在京キー局に中途入社。バラエティー番組や情報番組、特番などでディレクターやプロデューサーを担う。その後、報道局、コンテンツ事業局、宣伝部などを歴任し、現在は配信系事業を担務する。その傍ら、大学院においてコンテンツツーリズム、地域再生、メディア文化論などの研究に携わる。

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