社員3分の1をリストラ「東スポ」が復活を遂げた訳 オールドメディアの果敢なる"挑戦の物語"

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再建に関しては議題の1つとして、金融機関が仲介するコンサルティング会社の経営再建サポートを利用することも条件に付された。そして、コンサルティング会社からの要請はなんと100人規模の人員のリストラだった。

実際、管理職の立場からともに働いたスタッフや仲間たちとの関係は、どのように変化していったのだろうか? リストラの際の苦心を平鍋氏に尋ねてみる。

「はじめにお断りをしなければなりませんが、リストラではありません。正確には希望退職者制度です。こちらから条件を提示して、それで退職を希望する人に会社を辞めていただいた。そもそもこの希望退職者制度は、他の媒体社でもすでに行っています。一般企業ならどこも採用している制度であり、弊社だけが特別だったわけではありません。既存のビジネスで経営環境が厳しく変化した会社は、ほぼ行っています」

希望退職者制度とはいえコロナ禍に会社を去るということで、当事者にとっては大きな不安に襲われる。しかし、会社を辞めた人たちがその後の暮らしに支障が出るようなことはしたくないという思いから、転職斡旋会社と契約し、退職者全員に転職希望の登録を進めた。

さらに再就職先がいったん決定してもマッチングが悪ければ再度、再就職先の世話をしてもらえるようにしたという。つまり2回までは新しい職場を紹介する制度とし、実に70%以上の退職者の再就職が決まったのだ。

他の30%の退職者は自分自身で再就職先を選定したり、他社に引き抜かれるなどして結局、希望退職者のほとんどは再就職先が決定した。最終的に再就職先が決まらなかった退職者も数名いたということだが、会社としては最大限の支援を実施したのだ。

「週刊文春」を読んだ応募者が殺到

こうした中で「週刊文春」が東スポの危機を記事化し、その後の後追い記事もさまざまな媒体で取り上げられることになった。その反響の大きさは想像以上だったという。

「弊社が希望退職者を募っているという記事の反響はとても大きかった。しかし、逆にある意味でいい影響もありました。あの記事が出た後、東スポ内でネット分野の強化を図るため、1週間限定でゲリラ的に新卒募集をnoteを使って行いました。

noteを利用したのは、若い社員の意見でした。インターネット関連の仕事のために若いスタッフを採用するわけですから、同じような感性を持つ若手社員の意見に乗りました。その結果、ものすごい数の応募がきたんです。うれしい誤算だった」(平鍋氏)

「週刊文春」の記事を読んで東スポのことを知り、採用試験に挑んだ応募者もいたという。通常の6~7倍の応募があったとのことだが、人材を確保するために過去の経験則は通用しない。今が旬な若手の人材を得るためには、最も軽便な方法で正確に情報を発信しなければ人も集まらないということだった。

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