社員3分の1をリストラ「東スポ」が復活を遂げた訳 オールドメディアの果敢なる"挑戦の物語"

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競馬の場合には、ネットの予想サイトを見るファンも多いが、新聞にネットで得たデータや自分の予想を赤ペンで書き込むスタイルのファンがまだまだ多いという。スマートフォンやパソコンの予想サイトには赤ペンで自由に書き込むことができないので、今でも紙の方が支持されているのだ。

競馬について平鍋氏は、「東スポは競馬予想が強いことで知られていますから、競馬のジャンルでは生き延びる術があると思っています。他の夕刊紙も公営ギャンブルのおかげで平日よりも週末の方がよく売れますが、それでも週末に関しては東スポが圧勝しています」と語った。

「ネットニュース」だけに振りきれない理由

それほど週末の売れ行きが好調で平日の実売が落ち込むということであれば、平日のニュースはネット配信に特化し、週末のみ競馬新聞として販売するという、時代に対応した情報の発信に変化していくことは難しいのだろうか。そのような疑問を問いかけると、平鍋氏は新聞界の現実と業界の問題点を明かしてくれた。

「その提案は現実的ではないですね。いくらネットでのニュース配信が伸びてきているといっても、結局、紙の売り上げの方が桁違いに多いわけですから……。売り上げが伸びているといってもまだまだです。1カ月で1億円から1億5000万円ほどですから。あるライバルのスポーツ紙は2億円までネット配信による売り上げを伸ばしたともれ伝わってきましたが、多くてもその程度です。

弊社の場合でも、いくら東スポが全盛期の半分まで部数を落としたといっても年間100億円近くは本紙の売り上げがあるのです。まだまだネット配信とは比べ物にならないほど売り上げていますから、平日の発行を止めてネット専業になるというアイデアは無理ですね。しかも、その場合には社員数をさらに少なくして50人ほどにしなければならなくなる。

『紙はもう厳しい……これからはネットだ』といって、そうそう簡単に仕事の内容を切り替えたり、社員のクビを切ることはできません。そしてそれは、弊社だけではなく、印刷業者、トラックの運送会社、取次などを巻き込んだ議論に発展していく。いくら部数が減少しているから、平日の部数が少なくなったからといって新聞の発行を週末だけにしたら、業界全体が食べていけなくなってしまうんです」

たしかに東スポもご多分にもれず、ネット時代の潮流に乗り遅れてしまった感は否めない。その結果、新聞の部数減に伴って会社の財務状況も悪化した。会社の運転や資金繰りのために金融機関とも連携をするが、いざ融資を受ける際には金融機関とも経営に関する綿密なミーティングを余儀なくされたという。

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