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ホンダ【カナダEV工場は発表から1年で延期】主戦場北米がトランプショックで大混乱、「脱エンジン目標」の見直しも議論に

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ホンダは5月13日、カナダでのEV専用工場計画の2年延期を決めた。2024年4月に三部敏宏社長がカナダのトルドー首相(中央右)らを招き、同計画を華々しく発表した(写真:ホンダ)

ホンダのEV(電気自動車)戦略に逆風が吹いている。

「カナダのEV専用工場年間24万台の生産能力、バッテリー工場36GWh(ギガワットアワー)、総投資額は150億カナダドル(約1.5兆円)、2028年の稼働を目指して発表したが、北米でのEV市場の成長鈍化を踏まえて2年程度延期する」

ホンダの三部敏宏社長は5月13日に開いた決算説明会でそう明らかにした。カナダ・オンタリオ州にEV専用工場を建設すると発表したのは2024年4月。韓国ポスコや旭化成と組んだ電池部材の工場、自社による電池工場、EV工場までを包括する、ホンダとして過去最大規模となる1.5兆円を投じる一大構想だった。

EV工場には、ホンダが社内で練り上げている次世代EV(電気自動車)の生産ライン技術「MFD‐BEV」を初めて量産工程に反映させるはずだった。MFDはモジュール・フレキシブル・デジタルの頭文字を取ったもので、部品の共通化や生産ラインの自動化、デジタル化を追求した「ホンダの生産技術をすべて注ぎ込んだ次世代工場の象徴」(ホンダ生産部門幹部)と位置付けられている。

EV販売は鈍化、トランプ政策も逆風

投資延期の背景の1つにはアメリカでのEV販売の急失速がある。

アメリカの調査会社モーターインテリジェンスによると、2024年のアメリカのEV販売台数は前年比9.2%増の130.2万台。台数は増えているものの、伸び率は同46%増だった2023年に比べて37ポイント低下した。市場をリードしてきたEV専業のテスラは2024年に販売台数が同7%減の60.4万台と2015年以降で初めて前年を下回った。

日本勢より積極的にEVに取り組んできたアメリカのフォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)はすでに戦略を見直し、HV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)の開発と拡販に力を入れる方針に転換している。

トランプ政権誕生の影響も大きい。

もともとEVそのものにも批判的だったトランプ氏は、大統領に就任してすぐに2030年に新車販売の50%をEVにするという目標を掲げたバイデン政権時代の大統領令を撤回。罰金を伴う厳しいEV販売目標が課されたGHG(グリーンハウスガス)規制やカリフォルニア州など厳しい環境規制を導入する12州が採用する「ACC(アドバンスド・クリーンカー)Ⅱ」、EV購入に対して最大7500ドルの税額控除を行う「インフレ抑制法(IRA)」の修正にも着手した。

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