社員3分の1をリストラ「東スポ」が復活を遂げた訳 オールドメディアの果敢なる"挑戦の物語"

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「『このままだと紙はもう厳しい……』

といっても、その後のことをしっかり説明すれば、社員のモチベーションが下がり続けることはなかったということです。まずはしっかり説明すること。現実は厳しい状況だけど、それでもなんとか部数の下落角度を45度ではなく5度ぐらいにすることはできる。紙が売れなくなっても、その他で稼いでいく方法はあるといったら納得してくれた社員も多かった。ですから、今は紙だけではなく、ネットへの記事配信にも注力しています。

ネットでの売り上げも、2年ほど前から多くの若手社員に担当してもらい、3年前の3倍以上になってきました。若手がネットの記事配信を担当してくれることで、そこまで伸びてきたわけですから、やはり若手社員の感性はネットビジネスにマッチしているのだと思います」

「東スポ」はなぜ、金曜と土曜に売れるのか

東スポには「競馬」という強いコンテンツがある。予想から廐舎情報、その他読み物などで、多様な競馬コンテンツは紙の時代から東スポ読者の間では定評があり、一定のファンを獲得している。その競馬コンテンツをデジタル化して情報を発信する「東スポ競馬」も有料会員の獲得を2021年から始めている。今でこそ「東スポ競馬」は業界からコンテンツとして大きな注目を集めているが、残念ながら当時は収益を生んでいるという話は聞こえてこなかった。

実際、東スポは月曜日から木曜日はスポーツや芸能の記事がメインを飾るが、週末になると紙面の構成は競馬が中心になる。しかも、競馬がメインの金曜日と土曜日は平日の4倍の部数が売れていく。

東スポ全体の部数は落ちていても、週末に売れるその傾向はまったく変わっていないというが、ここ1~2年の新型コロナウイルスによって競馬ファンも競馬場に出向くことが少なくなった。どの程度、影響を受けたのだろうか。平鍋氏は次のように話してくれた。

「新型コロナウイルスの感染者が発生した第1波、第2波以降、感染者の増加傾向がみられたので、人の流れが大幅に減少し、東スポのように駅売りがメインの媒体は売り上げをかなり落としました。加えて、その間、東スポを買わなかった読者はコロナが沈静化してもなかなか戻ってきてくれなくなりました。

ところが、金曜日と土曜日だけは読者が戻ってきたんです。しかも2021年より2022年の方が週末の数字がいい。コロナウイルスの影響による『巣ごもり需要』で競馬など、ネットで決済できる公営ギャンブルは思いのほか好調だった。そのおかげもあると思っています。皆、ストレスを抱えていたんですね」

コロナウイルスの蔓延によって外食産業などは大きな影響を受けたが、競馬などの公営ギャンブルは好調といわれていた。その間、新聞からいったん離れてしまった読者はコロナの感染者数が漸減したとしても、なかなか新聞を買ってくれることはなかったようだ。しかし、金曜日と土曜日に限っては徐々に数字を戻しているどころか、2021年に比べ2022年の方がいい結果だという。

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