「睡眠に悩む日本人」の腸内で何が起きているのか 腸と脳でつくられるセロトニンはそれぞれ異なる

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職業柄、私はどうしても腸をひいき目にみてしまうのかもしれませんが、少なくとも腸は脳との密接なやりとりがあるのは確かです。そのしくみを「腸脳相関」と呼び、英語では「gut-brain axis」といいます。ガットとは腸のことです。

ここで、脳と腸を結ぶ神経の働きをみていきましょう。まず、重要な役割を果たすのが「自律神経」です。

人の体には、意志とは関係なく、自律的に働くしくみが備わっていることをご存じの人も多いでしょう。血液の循環や代謝、体温の調整など、眠っている間も自分の体の状態を常にコントロールしている最も基本的な働きです。

この自律神経には、体が活動モードのときに優位に働く「交感神経」と休息モードで働く「副交感神経」の2つがあり、どちらが優位になるかを常時切り替えて体を維持しています。いわばONとOFFのスイッチのようなものです。

たとえば、ストレスがなぜよくないかというと、「敵が現れた!」というとっさの判断を迫られたとき、体はすぐさま「交感神経」を起動します。そして“闘うか”あるいは“逃げるか”の選択をします。

このストレスがずっと続いてしまうと、それは戦闘態勢をとり続けているようなもの。交感神経がずっと優位な状態で緊張を強いられてしまうのです。

そうなると心も体も休むことができません。もちろん睡眠の質も下がります。また、本来、腸は副交感神経下で活発に動くため、交感神経が優位なままだと、腸は動きが制限されて、負担が増えるばかり。だからストレスはよくないのです。

ちなみに、腸と脳をつなぐのは、脳の延髄から発して腸にも達している迷走神経で、 体に張り巡らされた自律神経のうち、副交感神経に属する代表的な神経の1つです。

睡眠は、“休息モード”そのものです。不安やストレスを抱えていると眠れないのは、交感神経が優位になったままだから。1990年代に流行した「24時間働けますか?」という時代はとっくに過ぎ去っており、いかに切り替えられるかが、良質な睡眠のためにも重要です。

幸せホルモンの8割は腸でつくられる

ストレスに負けない力を与えてくれるのが、"幸せホルモン"と呼ばれる「セロニン」です。心を安定させ、感情のコントロールにつながる神経伝達物質で、足りなくなるとイライラしたり、うつ状態にもなりやすいとされています。

また、 セロトニンは、眠りに導く作用があるメラトニンの材料になるものですから、その点でも非常に重要な存在です。

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