「睡眠に悩む日本人」の腸内で何が起きているのか 腸と脳でつくられるセロトニンはそれぞれ異なる

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その働きをぜひとも有効に活かしたいところですが、ここで1つ、よく見聞きする“誤解”を解いておきたいと思います。それは「セロトニンは腸でもつくられているから、腸内環境を整えることが大事」というものです。

まず、セロトニン全体の80%は腸にある「腸管細胞」でつくられています。つまり、腸内細菌はかかわっていません。

そして残り20%のうち、18%は血液など全身でつくられ、残りの2%だけが脳でつくられます。昨今の研究でわかっているのは、腸内でつくられるセロトニンと、脳でつくられるセロトニンは別だということです。

腸管細胞でつくり出したセロトニンは、腸管の機能を活性化するために使われます。つまり腸のぜん動運動を支えることで、消化系の働きを促すのです。

一方、脳でつくられるセロトニンは、全体の2%にすぎませんが、心の安定をもたらす精神的な作用のために使われます。

腸内環境を整えるのは精神的安定のために重要

そもそも脳には不要なものを通過させないために「血液脳関門(BBB)」というフィルターがあり、セロトニンの材料であるトリプトファンという物質は通過できますが、腸でつくられたセロトニンそのものは入ることはできないと考えられています。

腸と脳、それぞれでつくられたセロトニンは、それぞれの働きのために使われてバランスを保っており、これは多すぎても少なすぎても問題になります。それぞれの領分を守って、お互いに役目を果たしているというわけです。

腸内細菌とセロトニンの関係で1つ補足をしましょう。腸内細菌のバランスが崩れると脳のセロトニンに影響することがあるため、別々とはいってもまったく無関係ともいえません。ですから腸内環境を整えることは、精神的な安定のためにもやはり重要なのです。

ただし、これらのしくみには今の段階では未解明な部分も多く、今後の研究によって明らかになるものもあるでしょう。

わかっているのはセロトニンが足りなくなると腸にも心にもエネルギーが枯渇してしまうため、しっかりと“在庫”を確保しておきたい、ということです。

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