「睡眠に悩む日本人」の腸内で何が起きているのか 腸と脳でつくられるセロトニンはそれぞれ異なる
セロトニンをどうつくるかですが、トリプトファンがその材料です。必須アミノ酸の1つでもある重要な成分で、体内ではつくることができないため、食べ物でとらなくてはなりません。大豆や牛肉、魚や卵などタンパク質に多く含まれています。
また日光浴や適度な運動で活性化されるため、運動も併せて行いましょう。セロトニンを増やすためには無理なく適度な運動をリズミカルに行うことがよいとされているからです。
そして、脳のセロトニンのもう1つの重要な役目は、睡眠ホルモンであるメラトニンの材料になることです。メラトニンは脳の松果体(しょうかたい)から分泌されますが、一般的に夜9時頃から少しずつ増加し、夜中にピークを迎えると、朝に向かってだんだんと減少していきます。質のよい眠りを得るためにメラトニンの働きを高めるには、寝る直前には強い光を浴びるのを避け、反対に起床後はなるべく朝日を浴びることが大切です。
それによってセロトニンの分泌も活性化されますし、メラトニンは朝日を浴びてから、14〜16時間後に増え始めるため、たとえば朝7時に起床すると、健康な体であれば21〜23時頃には眠くなるようになっているのです。
セロトニン&メラトニンを味方につけて、メリハリのあるすこやかな毎日を送りたいものです。
心の安定と腸の深い関係
心のあり方にかかわる神経伝達物質はセロトニンだけではありません。物事への意欲や集中力を高めるドーパミン、ストレスを受けると放出されるノルアドレナリンがあり、これらを合わせて「3大神経伝達物質」と呼んでいます。
これらの物質には密接な関係があり、たとえばドーパミンやノルアドレナリンが過剰に分泌されると、今度はそれを抑えるためにセロトニンが分泌されるというように、互いにバランスを取り合っています。
また自閉スペクトラム症やアルツハイマー病、パーキンソン病などの病気の発症にも、腸内細菌が関与しているという研究が増えてきました。
そこで私たちの研究チームでも、2013年に体内に微生物(腸内細菌)を持っている通常マウスと、無菌マウスからそれぞれの脳の一部を取り出して、その代謝物を調べました。すると全196の成分のうち、158成分が腸内細菌に左右されず、残りの38成分が腸内細菌の有無により増減があることがわかったのです。
その中にはドーパミンも含まれています。通常マウスより無菌マウスのほうがドーパミンを多くつくり出していたものの、ドーパミンの材料になる物質(フェニルアラニンやチロシン)は、通常マウスのほうが多かったのです。
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