部下が動かないと嘆く上司がよくわかってない事 部下に注意する際にメンタルづくりが大切なワケ

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そんなとき、優秀なリーダーはまずこう切り出します。

「あらたまって呼んで申し訳ない。今日は君に伝えたいことがあって時間を作ってもらった。この話が終わった後、おそらく君はもっと成長して、明るい気持ちで部屋を出ると思う。それが僕の願いなんだけど、話してもいいかな?」

こう確認をとります。

おそらく部下はなんらかの不安は拭い去れないものの、「はい、お願いします」と答えるでしょう。  

これこそが、いい指導をするための第一歩なのです。

そのプロセスを飛ばし、いきなり感情に任せて怒鳴り散らしたり、不安を与えたりするのではなく、まずは相手の心を軽くして、扉をひらいた後に注意するように意識するのが望ましいでしょう。

部下の指導は「聞ける態勢づくり」がすべて

部下だって子どもだって人間です。注意されるときや不利な立場に立ったとき、防衛本能が働き、とっさに身構えてしまいます。

そこをいきなり「おまえは何をやってるんだ!」と頭ごなしに言われると、反論するかは別として、心の中でファイティングポーズを取りながら、心の扉を閉じてしまいます。

こうなると、一見聞いているフリはしているものの、言葉はまったく入らなくなってしまいます。これではお互いに不毛な時間を過ごすだけ。

しかし、リーダーの本当の目的は、感情をぶつけることではありません。相手のミスを修正し、いい方向に導くことのはずです。

だからこそ、いったん冷静になって、相手の心の扉をひらくことに集中するのです。

まわりくどいし、めんどくさい作業かもしれません。しかし、優秀なリーダーはその気持ちをグッと抑えて、まずは必ず相手が話しやすいメンタルを作ります。

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まったくやる気のない人は例外として、たいていの人は自分の成長に興味を持っています。

人は指導されるのが怖いのではなく、ゴールが見えない、いつまで続くかわからない不安のほうが怖いのです。

だからこそ、終わった後の状態をあらかじめ示してから注意をするのです。

もう一度言います。部下にも子どもにも感情があります。その感情を力で押さえつけようとすれば、相手は反発するだけです。

いかに自己重要感を傷つけずに大切なことを伝えるのか、おそらくこの課題はここからもリーダーたちにつきまとっていくでしょう。

永松 茂久 人財育成JAPAN代表取締役

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ながまつ しげひさ / Shigehisa Nagamatsu

大分県中津市生まれ。講演の累積動員数は延べ60万人にのぼる。3坪のたこ焼き屋からスタートし、現在は作家として活躍。自身の執筆だけではなく、次世代の著者育成、出版コンサルティング、経営コンサルティング、出版支援オフィス、講演、セミナーなど、数々の事業を展開する実業家でもある。『人は話し方が9割』『人は聞き方が9割』『リーダーは話し方が9割』『喜ばれる人になりなさい』(すばる舎)など著書多数。

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